ザザ・・・・ザザザァ・・・・
海を見つめる少女、その瞳の先に映るのは崩れた城。
「城は時とともに朽ちていったが・・・
罪は朽ちることなく永遠に私を苦しめる・・・
だが、それで・・・それでいい・・・」
ザッザッザッザッザ。誰かが走ってくる。
「おねーちゃーん!」
あの子だ。
「どうしたの?」
「レッドリーさんがもうすぐおやつができるから呼んで来いだって!」
「そう、でもあの人はそういって30分はかかるから少しお話しましょ。」
「うん!じゃあ黄色の勇者の話をして!」
「黄色の勇者のお話ね。分かったわ。これはね、ある王国の・・・・」



ある王国のお話。
その王国の王族たちはキレイな黄色の髪をしていることから黄色の国と呼ばれて
いる。
それはその黄色の国で王女を最後まで守り抜いた勇者の話。


「王が・・・チャーリー国王が亡くなられた・・・」
その知らせはイキナリだった。
「昨日まではあんなに元気だったのに・・・」
この国の姫、リンはあまりのショックにその場に倒れてしまった。
「父上の死因は?」
冷静に答えるのはリンの双子の弟、王子レン。
「何でも心臓発作だとか・・・」
「お・・・とう・さ・ま・・」
「リン、泣くな。今は泣いている場合じゃないだろ?」
「レン様の仰るとおりです。今はどちらが王位を継承するのかが重要です。」
「私は王位なんかいらない!」
「何を言うんだ、リン!君のほうがいいに決まっている。僕は君に比べ体が弱い
。そんな王は国民から支持されるはずが無い。」
「そんなこと言ったってやだ!私はずっと姫で居たい!」
「リン様・・・」
不安そうな顔をしている大臣。
「大臣、リンが次期王女だ。」
「レン、だから私は・・・」
言葉を制すレン。
「いいか、僕は君の手助けをする。君は一人じゃないんだ・・・
いいね?」
リンは頷くしかなかった。


それから一年後
僅か十三にして王女になり、十四で全てを一人で動かしているリン。
その傍らには召使の格好をしたレン。
「レン、おやつを持ってきて。」
感情の無い声で命令するリン。
「かしこまりました。」
それに従うレン。
リンは王位を継承して一年、たった一年で貧しかった黄色の国を豊かにした。
彼女には才能があった。
だが王女にしたのは間違いだった。彼女はどんどん傲慢になっていく。
「本日のスウィーツはティラミスとなっております。」
スプーンですくって口に運ぶ。
「最低。」
ペチャッ、レンの頬にティラミスがぶつかった。
「すぐに別の物をご用意します。」
最初は僕も王女と同等の力があった。
だが次第に僕の地位は下がりいつしか執事に
だがそれでいい。
彼女の側にいれるのなら。




緑の国

「お使いを頼まれたのはいいが・・・僕は今どこに居るんだ?」
つまり迷子だ。
「困ったな・・・」
「危ない!!」
「え?」
ドサドサドサ。店先に山積みにしてあったネギが崩れてきた。
「ふぐぅ・・・」
「だ、大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
「ハ、ハイ・・・」
「よかった・・・ごめんなさい、私が崩してしまったの。」
僕の目の前には人目をはばかるようなローブをまとった少女がいた。
その少女は美しい緑の髪をしていた。
「あの・・・どうされました?」
そして、息をするのも忘れるくらい
「え?あ、なんでもないです。」
綺麗だった。
「ではすみませんが失礼します。もう時間が無いので。」
「ハ、ハイ。」
僕はその日、お使いをすっかり忘れてしまい王女にこっぴどく叱られてしまった。




「カイト様は?カイト様はまだ来ないの?」
「カイト様がいらっしゃるのは正午です。もうしばらくお待ちを。」
「私に報告なんて、きっといい知らせに決まってるわ!」
「カイト様がいらっしゃいました。」
「カイト様!私になんの・・・」
カイト様の傍らには、緑の国で出会った少女・・・緑の国の姫、ミク様がいた。
「今日はご挨拶に来ました。」
「・・・」
「僕はミク姫と結婚します。」
空気が、凍った。
「・・・ごめんなさい、今日は気分がすぐれないの。今日は先に休ませて貰うわ
。カイト様、ミクさん、悪いけど今日はここで。」
「?」


「何よあの女!私のカイト様を・・・!」
「リン様、先程の態度はいかがかと・・・」
「うるさい!!!」
「リン・・・」
「何度言ったらわかるの!?名前で呼ばないで!!」
「・・・」
「レン・・・」
「何でしょうか?」
水滴が垂れるように、ポツリと言葉をこぼした。
「あいつを・・・ミクを殺して・・・」
リンの頬には涙がつたっていた。
僕は決めた、何であろうと、彼女を泣かせまいと。
僕は、悪になってやる。
だがどうして?
涙が・・・止まらない・・・



ミク姫が死んだ、だがそれがリン王女の陰謀だと分かるのはそう遅くはなかった


城門前広場

「民衆よ!今こそ武器を取り立ち上がるときだ!あの忌ま忌ましい悪を倒すのだ
!」
赤い鎧を着た女剣士が叫ぶ。
「行くぞ!敵は王女ただ一人!抵抗する者以外に危害を加えるな!」

城内

「リン様、早く逃げる準備を!」
「ええ、だけど逃げ切れるかしら・・・」
「では変装しましょう。まずこれをお召しになってください。」
「あなたの服?」
「ええ、奴らの狙いはあなたのみ、これを着れば大丈夫です。」

「お似合いです。」
「そう・・・だけど男の服を着ているのに長い髪は変ね。」
「その美しい髪を御切りになるのですか?」
「鋏貸して。」
「かしこまりました・・・」
ジャキン、ジャキン
綺麗な黄色の髪が床に散らばる
「どう?」
目の前にいる彼女は髪が短くなり僕とまったく変わらなかった。
「では王女、隠し通路を伝って裏庭に御逃げください。」
「あなたはどうするの?」
「私(わたくし)はまた後を追います。先に御逃げください。」
「・・・・昔、二人で遊んだ海、覚えてる?」
「・・・ハイ、あの時の波の形まで鮮明に。」
「レン、私、そこで待ってる。」
「・・・わかりました。」
「レン、ゴメンね・・・私・・・ずっと助けてくれてたあなたに・・・」
リンの頬を涙がつたう。
「リン、別に僕は恨んでなんかいない。」
「レ・・・ン・・・」
「ただ、もう少しリンと遊びたかったな。」
僕の目にも熱い物がこみあげてくる。
「レン!!」
僕をキツク抱きしめてくるリン。
こうやって触れ合うのはいつ以来だろう・・・
「リン。    。」
「え?何?聞こえなかったよ?」
「いや、何でもないよ。さあ、お別れだ。」
「絶対・・絶対に来てよ?約束よ?」
「ああ、約束だ。」
リンが隠し通路をの中に入って行く。
その背中をずっと見つめるレン。
「さて、僕も着替えなくちゃ。王女のドレスに。」



「王女はここか!?」
女剣士が乱暴に扉を開ける。
「この、無礼者!私を誰と心得る!」
「武器を構えてるなんて威勢がいいことね。この国の・・・元女王陛下。」
「まだ王位を捨てた覚えは無くてよ?」
「あなたが民衆からなんて呼ばれてるか知ってるの?嫉妬に狂った悪の娘よ?」
「いつでも戦える準備はできていてよ?」
「ご自慢の髪の毛も切り落としてる位だからね、覚悟はできてるみたいね。」
「この悪め!!死ねぇええええええ!!!!」
安っぽい鎧を着た男が王女に飛び掛る。
グサ!王女が手にしていた槍で男を一突きする。
「さあさあさあ、私に刺されたいやつは前に出て来い。」
「みんな、下がってろ。」
女剣士が前に出る。
「私はあなたには傷をつけたくない。」
「キレイごと?よくそんなこと言ってられるわね。」
「おとなしくしていただけば命だけは助けます。どうか・・・」
「・・・・」
女剣士に槍をむける王女
「キレイごとは嫌いじゃないは、でもそろそろおやつの時間なの。だから・・・」
ダダダダダッ!
王女をみなが取り押さえる。
「まだ殺すな!縄で縛っておけ!公開処刑だ!」
「誰だ!誰が命令しているんだ!私が言ったこととは違う   」
女剣士の声も届かない、民衆は悪の娘を取り押さえる。



城門前広場

「殺せ」
「早く悪の娘を殺せ」
「首を切れ」
怒りの言葉が吐き捨てられる。
民衆はざわついている。
「・・・・お前の罪は以上だ。何か言い残すことはあるか?」
「・・・・・・」
「何も無いのか?・・・・首を落とせ。」
ゴーン、ゴーン、ゴーン。教会の鐘が三つなる。
「あら、おやつの時間だわ。」
ザシュ!首が落ちた。
辺りが血に染まる。
黄色の髪が赤くなる。






「・・・・と言うわけで、王女様を逃がした勇者様でした。おしまい。」
「ねぇねぇ、このお話って変わってるよね?」
「なんで?」
「だって、王女様は悪者だし、勇者は戦わないし。」
「ふふ、きっといつか分かるわ。」
「いっつもそれじゃん。いつになったら分かるの?」
「そうね、私くらい大きくなったら分かるかもね。」
「ん、よく分からないけど分かった。」
「そう、じゃあレッドリーさんのおやつができてる頃ね。」
「うん、じゃあ先に走って行って待ってるね。」
「転ばないように気をつけてね。」
「うん、分かってる!」
あの子が走って行く。
私は懐から一枚の羊皮紙を取り出す。
それを近くに落ちていた空き瓶に入れ、海に流す。
「レン、私も、    。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Sweets Time

悪ノ派生小説です。

空欄の部分はきっと分かるはず。

この話を見てくれたあなたに、    。


レンがミクに会うシーンを加筆しました。

色々と加筆修正しました。

閲覧数:792

投稿日:2008/08/19 21:23:40

文字数:3,845文字

カテゴリ:その他

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