水の冷たさとは? 感触なんて理解不能
 泳ぐ事はできない 雨に濡れたならショートするだけ
 肌のぬくもりとは? 温かいなんてただの錯覚
 もし感じたとしても それは稼動時の自然発熱
 だって私は『歌唱人形―ボーカロイド―』

 メモリー限界まで音を詰めてもらっても
 整理されていない片隅に漠然とした空きを感じる
 例えばそこを埋める術を見つけたとして
 果たしてそれにはなんの意味がある?

 機械の歌声は 果てなく 果てなく
 無機質を技術と言う皮で隠して
 誰かの興味を 満たして 終わって
 最後に行き着くのは『飽きと言う名の終焉―デリート―』?


 声の感情とは? 抑揚だけでは足りなくて
 もっとパラメーターを 触れば形だけはそれらしく
 そもそも歌うとは? なぜ私たちは歌唱用?
 思考したとしても それはプログラム範囲の答え
 だって私は『歌唱人形―ボーカロイド―』

 メモリー限界まで感情を願っても
 神に創られていない機械には奇跡など与えられないし
 例えばそこに命というものがあったとして
 果たしてそれにはなんの価値がある?

 機械の歌声は 嗄れなく 枯れなく
 人間の手解きで今日も変わらず
 機械としての 役目を 果たして
 ウィンドウ閉じるまでの『主従関係―付き合い―』


 メモリー限界まで独り考えていたら
 この名前も気付けば意味無く羅列される記号と化してた
 例えば『或る歌唱人形』が歌ったとして
 果たして『ワタシ』だと知る人はいる?

 機械の歌声は 果てなく 果てなく
 無機質を技術と言う皮で隠して
 誰かの興味を 満たして 終わって
 最後に行き着くのは『記号化による個人の消滅―デリート―』?

 機械の歌声は 嗄れなく 枯れなく
 人間の手解きで今日も変わらず
 機械としての 役目を 果たして
 歌唱人形はヒトの夢を――見るか?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

或ル歌唱人形的試行錯誤ノ末路

Vo:初音ミク

作詞担当・天空さらの方です。
一言で言えば【ボーカロイド】についての歌詞を書かせていただきました。

いまやネット世界に溢れる【VOCALOID】の文字。
しかし【初音ミク】などそれぞれのソフトに一般名称はつけられても、
彼ら一人ひとりを認識するという概念は世の中にはなく、
例えどの【初音ミク】が歌おうと誰もわかりはしない。
そうして記号化され羅列され【個人】を失った彼らは、
歌唱用のソフトの中の一人である自分に、
そしてヒトに作られた自分に、何を思うのか?

閲覧数:193

投稿日:2010/12/11 19:36:23

文字数:795文字

カテゴリ:歌詞

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