少年は自分の　幸福が聴こえない
少女は自分の　不幸が見えないまま


夜の町　迷子の聖堂
星のピアノ響く
少年は　記憶頼りに
忍び込んでは弾いてた
主旋律の無い曲

少女は聴いてた
壁の向こうで歌う
誰かが奏でる音色は
自分の為だと
喜ぶと思いながら

少年は自分の　幸福が聴こえない
少女は自分の　不幸が見えないまま
どんな重ね方をしても　重ねられない歌


輪郭で　覚えた町を
躓きながら行く
少女は　出逢うと決めた
音の葉舞う部屋への
扉を開けた

少年は　夢見た
誰かと奏でる時を
誰かに届けと弾いてる
そのすぐ後ろに
少女が居るとも知らず

少年は自分の　幸福が聴こえない
少女は自分の　不幸が見えないまま
ゼロに限りなく近くて　何処までも遠い距離


どちらが幸せなのかと
問い掛けながら流れている旋律

少年は自分の　幸福が聴こえない
少女は自分の　不幸が見えないまま
振り返るだけの　幸福が聴こえない
誰にでも見える　不幸が見えないまま
幾ら探しても無いようで　何処にでも在る歌

少女のその手が　少年の肩に触れた



(読み)
しょうねんはじぶんの　こうふくがきこえない
しょうじょはじぶんの　ふこうがみえないまま


よるのまち　まいごのせいどう
ほしのピアノひびく
しょうねんは　きおくたよりに
しのびこんではひいてた
うたのないきょく

しょうじょはきいてた
かべのむこうでうたう
だれかがかなでるねいろは
じぶんのためだと
よろこぶとおもいながら

しょうねんはじぶんの　こうふくがきこえない
しょうじょはじぶんの　ふこうがみえないまま
どんなかさねかたをしても　かさねられないうた


りんかくで　おぼえたまちを
つまずきながらゆく
しょうじょは　であうときめた
おとのはまう　へやへの
とびらをあけた

しょうねんは　ゆめみた
だれかとかなでるときを
だれかにとどけとひいてる
そのすぐうしろに
しょうじょがいるともしらず

しょうねんはじぶんの　こうふくがきこえない
しょうじょはじぶんの　ふこうがみえないまま
ゼロにかぎりなくちかくて　どこまでもとおいきょり


どちらがしあわせなのかと
といかけながら　ながれているせんりつ

しょうねんはじぶんの　こうふくがきこえない
しょうじょはじぶんの　ふこうがみえないまま
ふりかえるだけの　こうふくがきこえない
だれにでもみえる　ふこうがみえないまま
いくらさがしてもないようで　どこにでもあるうた

しょうじょのそのてが　しょうねんのかたにふれた