夏の匂いが少し 遠くへ行ってしまったね
すいかみたいな夕焼けを いつまでも眺めてたんだよ

星のランプが灯る 地上と空に一つずつ
ガラスの鳥を探して 夕空に目を凝らした

天候ハ良好 然シ 本日モ機体ハ見エズ
吉兆を期待して 同じことを書くのも 少し疲れた

日々公転する宇宙の 片隅の滑走路で君を待っている
“重力圏外脱出” そんな報せも遠い昔受け取った気がするな
消えて逝ってしまうなら どうかこのまま思い出の一つとして
アルバムに閉じ込める前に、戻ってきてはくれないか


待宵草が咲き 静寂で着飾る夜が来る
月の裏側よりも向こう 羽ばたいてる君を思うよ

見なくなった蛍が ここではまだ空に残ってる
白銀(しろがね)のベルを鳴らして 夕空に合図を送った

天候ハ良好 流星 少シダケ胸ガ痛ム
失望に失笑し 機体を見る代わりに 緑陽を見た

空港の東の端の 香杉(ケードル)の木の下で君を待っている
“星間通信途絶” 日々の報せも遠い昔 もう届かないのかな
沈黙の蒼きタキオン 僕のこの声を空駆ける光に乗せ
空想でもなんでもいいから、持っていってはくれないか

日々繰り返す宇宙の 片隅でまたぽつりと夕暮れが終わる
“メイデイ 応答願ウ” 宛てのない音と感情のやり場に困っている
僕も行ってしまうから どうかこのまま思い出の跡が残る
アルバムを閉じ込める前に、戻ってきてはくれないか あと一度でいい


緑陽は幸運の証と野良猫がふっと言った
あるいはそれは夏を惜しむ耳の幻だったかな


“応答ヲ願ウ 此方(コチラ) 外銀河開拓班”
吉兆を期待した 密かな耳の奥で 弾けた声は

“天候ハ良好 メイデイ? 本日宇宙ハ晴天”
郷愁に失笑し 思わず駆け出し見た 星空の蒼さ

暗黙に停滞してた日々が少しだけ好転した

日々繰り返す宇宙の 片隅の滑走路の些細な出来事
“着陸許可再要請” だけどそれは紛れもない夢でない現実だ
誰かが時計のネジを巻く 君の声は相変わらず不機嫌調
クレームも後で聞くから、戻ってきてはくれないか

夜空を走る銀彗星 追いかけて君を迎えに行こう
“大気圏無事突破” そんな報せに滑走路中が沸き立っているよ
歴史の動いたこの日を 眩しい夏の思い出の一つとして
アルバムに閉じ込める前に、君にひとつ言いたい


「おかえり」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

夕焼けエアポート

またまた新「革命」シリーズのスピンオフ的作品。しいて言えば「ポラリスが呼んでる」とは別の、「夜が怖いから~」の続編にあたるものです。新たな革命から帰還する人、そしてそれを待つ人の歌。
夏にはまだ早いですが、久々に季節先取りで。

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投稿日:2014/06/24 14:12:21

文字数:974文字

カテゴリ:歌詞

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