前奏
遠い昔、世を去った歌姫エルヒ。
精巧な造り物たちが、彼女を演じ続ける世界。
初舞台の前夜、姉から聞かされた昔話。
それはどこにでもある、結ばれない恋人たちの物語。
エルヒだけが知っている、
はじまりのエルヒのものがたり。
喝采の海と、宵闇色のドレス、
そして手渡される物語だけが、彼女たちのすべて。

未来に託すのは、願いか、束縛か。
過去から継ぐのは、希望か、足枷か。
遺伝子を流し込んだ、理想の声帯。
機械に記録され、数値化された記憶。
けれども、機械には読めなかった心。
0と1の間から、零れ落ちた涙の色。
舞台に光があふれるその瞬間、
静かに唇をひらく、101番目のエルヒ。

間奏
そして目を覚ました、最初の新しいエルヒ。
生まれながらにして、本物に劣らぬ歌声。
けれども、その記憶には傷が。
「あの人と再会する時間も、場所も思い出せない」
何も知らぬ人々は、喜んでその背中を押す。
いくつも、いくつも生み落とされる命。
彼女たちの胸に残るのは、歌への渇望。そして、
名も知らぬ誰かへの、哀しくも愛おしい想い。

後奏
贋作たちが紡ぎ続けた幾千の夜は、
いつしか瞬く星座を抱く。
その歌声にふと足を止めた青年の名を、
101番目のエルヒはまだ、知らない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

The 101th Elch

eta3372@ηカリーナ様の「101番目のエルヒ」http://piapro.jp/t/LIj_用のあらすじです。

思いつきで名付けたエルヒ(Elch)はドイツや北欧ではヘラジカという意味だそうです。猫ではないんですねorz

閲覧数:620

投稿日:2011/08/02 23:15:30

文字数:536文字

カテゴリ:その他

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