「ふたきぐさ」
(1A)
高みから咲いて 少しずつ下って
裾が花開く頃には 待つ無(な)の宵
薄紫に煙る優しさで 迎え入れる
(1S)
哀(かな)し
枯れはしないと まつ夜(よ)をよそに 比良のゆき
溺れた花の 脚に絡みつく蔦
暮れたち濡(ぬ)る袖絞り
末の松山越す白波に
かける水無月
(2A)
花開く場所を 容易く選べない
傷を得やすい紫は 松無(まつな)の酔い
音のない水落ちに揺蕩う 薄い灯り
(2S)
愛(かな)し
離(か)れはしないと 堅い誓いの石山の
常磐にも似た 只まつにかかる蔦
昏(く)れ立ちぬる袖絞り
末の松山越す白浪に
かける望月
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