ジャケット

 今日は毎月買っている漫画雑誌の発売日。
 玄関を出て家の前を走る道路に差し掛かり、右に曲がったその時、
「ん?」
 何かを潰してすべってしまいそうになるような感触が、靴底から伝わってきた。
 何を踏み潰したのかと思い、膝を曲げ、靴の裏を見てみる。
「げ!」
 靴の裏には、土のような、カレールウのようなもの、すなわち、うんこが付いていた。きっと、犬のものだろう。なんでこんな所に落ちているんだよ! 飼い主め……
「きゃはははは! きったなーい! うんこ! うんこ! うんこマン!」
 甲高い女の子の声が聞こえてきた。前を見ると、そこには妹がいた。あのメスガキ、もう帰ってきたのか。
「てめえ!」
 うんこが付いている方の靴を脱ぎ、それをあいつに向けて投げる。あいつはそれをよける。
「レディに向かってなにすんだよ! にーちゃん!」
「うるせえ! おまえのようなレディがいてたまるか! おまえのような生意気で下品な奴のことを、メスガキというんだよ! メ・ス・ガ・キ! わかったか!」
 あいつに向かって怒鳴ったその時、車が奴の背後から猛スピードで走ってきた。
「危ないっ! ……うわっ!」
 あいつにぶつかると思っていたら、おれの目の前までに迫っていた。おれは思わずジャンプする。
 そして、庭の木にしがみつく。
「ふう……」
 無事、かわせたようだ。
「そういえば、あいつは……」
 下を向き、道路を見る。いない。車にぶつかって飛ばされたのだろうか。
「ん?」
 ケツのあたりに何かが当たっているような感触がある。
「う~ん、う~ん」
 ついでに、あいつの声が聞こえてきた。俺のすぐ下から。
「にーちゃん、ケツ、ケツ~」
 どうやら、あいつもジャンプして木に飛び移ったらしい。
 その時、おれのすぐ下に来たわけだ。いや、あいつが先で、おれがあいつの上に来たのかもしれないが。
 それはともかく、なんか、屁をこきたくなってきた。
 まあいい、このまましてしまおう。
 というわけで、おれは屁をこく。できるだけ静かに。ぷすうぅ~っ、とガスがケツ穴から抜けていく。
 すると、ケツのあたりにあった感触がなくなった。
「あれ?」
 どうしたのかと思い、下を向く。
 逆さまになって地面に突き刺さり、下半身だけ地上に出ているあいつの姿が見えた。
 ガニ股をじたばたと動かすあいつ。なお、スカートではなく、ショートパンツをはいているからか、下着までは見えない。
 どうやら、おれが屁をこいた途端、落ちたらしい。そんなに、臭かったのだろうか。
「しょうがねえな」
 木から飛び降り、着地して屈伸する。
 あいつの所に向かい、奴の両足首をつかむ。
「よっ!」
 あいつを地面から引っこ抜く。
 土だらけの上半身を現したあいつは、ぺっぺっ、と口から土を吐いた。
 おれが足首を離すと、あいつはおれに向き直り、にらみながら口を開いた。
「この、すかしっぺうんこマン! 死ぬほど臭いんだよ!」
「うんこマン」から「すかしっぺうんこマン」に進化しちまったよ。

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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい
  • オリジナルライセンス

メスガキとすかしっぺうんこマン

自前のショートショートを歌にしてみました。
鏡音レンと鏡音リンに歌わせています。
複数の曲調を持つ曲。

閲覧数:684

投稿日:2024/01/02 20:06:46

長さ:04:35

ファイルサイズ:6.3MB

カテゴリ:ボカロ楽曲

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