とある神社に、兄妹があった。
兄は、弓の音で霊魂を心に迎え入れ対話し、浄化と引き換えにその霊魂の持つ術の行使を。
妹は、生まれつき授かった強大な霊力を込めた弓矢で直接射ることで、強引に迷える魂を消し去る術を操った。
当然妹の傍若無人さは魍魎達の畏れと反感を買い、日に日に妖怪たちに襲撃される回数も増し、その格も強大になっていった。
妹自身は揺るがぬ自信と、それを裏付ける実力でこともなげにあしらっていたが、比較的霊力が弱く、強まる妖の前にほぼ見ているだけの状態となってしまった兄としては気が気ではない。

ついにある日、その心の隙を突かれ、兄は妖怪に体を乗っ取られてしまった。
だが、百鬼夜行など吹き飛ばせばいいとしか考えず、一般的な除霊を兄任せにし、疎かにしていた妹にはこれを祓えない。
後悔と無念さばかりが胸を渦巻く。
長い長い迷いの果て、ついに妹は決断を下す。

――そして、兄の魂は、妖とともに世界に散り去ってしまった。

激闘の末、神社も全損。残ったのは、あふれんばかりの悲しみと苦悩、ありし日の思い出、そして……兄の使っていた弓だけ。
試しに弾いてみると、ひどく儚く、しかしとても優しい音がした。
まるで、兄そのものであるかのように。

「兄(きみ)は、どうして、あんなに恐ろしい術を使えたの……?」

妹の強引な術は、その実恐怖の裏返しであった。
死霊などを胸の内に呼び込み、対話するなど想像するだに恐ろしかったのだ。
そしてそれを何事も無くやりとげる、強い兄を尊敬していた。
愛していた。
自分が忌避していた技。
ついぞ知ることのできなかった兄の一面。
虚空に問いを投げてももう返ってはこない。
自分が此岸でも彼岸でもない、どこかへと消してしまったからだ。
なれば、と。
ひとしきり目を腫らした後、妹は覚悟を決める。
神社の残骸をあさり、今まで目を背けてきた術の載った書と、兄の遺した弓をもって旅に出る。
兄の見ていた世界を、自分も見てみたい。
ぎこちなく弓の音を響かせながら、その決意を強めていった。

いくつか、年月が過ぎ……。

妹は、涙を流し続ける猫叉に出会うことになる。
かつで抱いていたものは、慈しみへと変わっていた。
奏でる弓の音は、兄のものと同様に、いや、それ以上に儚く、深く響く。
今日も彼女は、世界に安らぎの桜の花びらを舞わせるのであった。

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桜巫女あらすじ

ぱぴさん 様の素敵すぎる歌詞にあてさせていただいた歌詞の、バックボーンといいますが……あらすじです!

http://piapro.jp/content/?id=wdm37tr0nkkhs7tj&cdate=2011-11-12%2020%3A14%3A24

妄想止まんないよ!

意図せず不快な表現を含んでしまっていた場合には、取り下げさせていただきます。

閲覧数:87

投稿日:2011/11/13 05:15:08

文字数:988文字

カテゴリ:その他

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