ヒルガオ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9023147
少年は畦道走る
水の向こう側で反転した真っ青な空が弾け跳ぶ
少し凪ぐ朝
音のない庭でけぶるような微笑み見付けたんだ、ほら
キラキラ キラキラ
初蝉鳴いていた
微笑んでいたのは“ヒルガオ”
まるで瓶覗の青みたいな夏のイメージ
だけど少年はまだ名前を知らなかった
陽が落ちた帰り道
閉じて俯く花を見つめていた
少女は坂道仰ぐ
雲の向こう側で白線が真っ青な空を切り裂いた
風薫る朝
色のない庭で透き通るようにそっと囁いた
「さよなら──さよなら。 ……もう一度、笑いたいね」
澄み渡る青の思い出
蔓草に淡紅が燈れば夏の合図
もしも世界を分かつ魔法に気付けたなら
少女を置いて消えてしまわぬように名前を呼んで
焦がれ続けていた“ヒルガオ”
忘れる事など出来ないあの夏の匂い
駆け回ってはしゃいだ
川べりで涼んだ
まぼろしなんかじゃなかった
全部全部全部
それはきらめく“ヒルガオ”
これから描いてゆく新しい夏の絵コンテ
少年はその日初めて“ヒルガオ”に手を伸ばした
果てしなく続く方へ歩き出した二人は笑っていた