『兎の涙』
『兎の涙』
君の指が離れた日 記憶の残照が映える
紡いだ日々の幸せを 君に届けられるように
雪道 足跡を残し 歩く 宵の闇の中
赤く指がかじかんで 落としかけた花の辿り
吹き抜けた風は琥珀の七生 忘れ忘れじの輪廻の回帰
夜に木霊し消える わらべうた 誰かが残した 雪うさぎ
久遠劫の時の果てから 弥勒が降りのその日まで
色は空に 空から色へ たゆたう流れの泡が揺れる
遠い昔から続く 夜の伽の物語
絆ぐ人の世の縁 やがて巡り来る苦難
月より甘いは兎の秘薬 夢ゆらゆらりと御影を落とす
火を焚きくべるは遠くの村か 祈る篝火は寒月へと
阿頼耶識へこの身を灼いて 弥勒が降りのその日まで
僕は哭いた 震えて哭いた 喉を枯らして夜を焦がす
僕が土に還るその時は
いつか君と巡り逢うように
ただの一つ君の名を想う
胸に咲いた天上のロータスよ