想い出ディストーション
涙は出なかった 予想はしていたから
二人でいるときも 誰かの視線を気にしてたよね
どうしてそんなにも 怯えた目をしてるの？
わたしが 取り乱すわけないじゃない
ただ憂鬱なの
夏が終わりを迎える瞬間の 線香花火のような
想いが 祈りが 止まないから
砕いて 真夏の夜空を
燃やして 書きかけの詩を
嫌い 大嫌い 嘘だらけの 放課後
聞かせて あの娘の噂を
満たして がらんどうの穴
返して わたしの大事な
初恋を
夕暮れの教室 お喋りしてるあの娘
隣で笑ってるのは わたしのハジメテノヒト
感じたことのない 境い目のないジェラシー
湧き上がってくるのが すごく怖くて 俯いていた
恋が終わりを迎える瞬間の ブラックホールのような
澱みが 震えて 渦巻くから
あなたを 忘れられなくて
夜空を ひとり見上げても
夏の 想い出が 亡霊のように ゆら ゆら
海岸で 浴衣ではしゃいで
花火の 音に驚いて
すべてが 楽しかったのに
戻れない
長い睫毛を 雨で濡らして
甘えた声で キスをねだって
あの娘みたいな タイプがいいの？
どうして わたしを 好きにさせたの？
季節は わたしから なにか
大切な ものを剥ぎ取って
海を 翔るように 過ぎてしまう ──さよなら
最近 あらゆる全てが
どうでも 良い気がするけど
夜の海に立ち寄ると 涙が溢れ出すの
