シュトゥルム・ウント・トランス
「シュトゥルム・ウント・トランス」(ショート)
朱く染まりゆく影の朧気なる姿を
燃えたぎる心にはっきりと刻み込む
涅槃寂静の刻を恒河の沙に解いて
流れゆく浮世は陽炎の如く揺れ
花の散るらんしづ心 今宵拠り所
斯くして舞台はその幕を上げて蠢きだす
熱き風がこの身焦がし
嵐呼びて海を燃やす
風の如く舞う姿は
歴史の中に咲いた只一輪の白き徒花
因果地平の果てから魂を呼ぶ声が
折れかけた心を俄に勇気づける
老いた水夫の乗る船未だ新しい海に
拓かれた水面を灯す火となり果てた
浅き夢見し酔ひもせず 見えるは地獄絵図
世界の坩堝に落ちて伏魔殿 混沌の中
明ける夜が胸を鳴らし
消える星に身を重ねる
飛ぶが如く駆けて征くは
時代の狭間の中で語られること無き礎
熱き風がこの身焦がし
嵐呼びて海を燃やす
風の如く舞う姿は
歴史の中に咲いた只一輪の白き徒花