春と修羅
君を捨て、君を描く。
----------------------
静寂の透明な部屋 君と僕が二人
淡い蒼を揺らしながら燃え尽きるその体温
君がくれた雪は溶けて氷柱になり果てた
形を変え僕の中で研ぎ澄まされ欠けて行く
あらゆる喪失を箇条書きして
僕のためだけに希望を添えた
素晴らしいこの世界は万物に悲しみを降り注ぎ蒼を増す
君という透明を上書かないようにまだ足掻いてる
「黒々と鈍る鋭角は群青深淵に容易く沈んでいくでしょう、浅葱空を忘れるでしょう。
モノクロームの緞帳の中に垣間見えてる白銀を拾い続けて幸せを忘れないでね。」
君が餞た言葉の意味すら
今はもう形がわからないや
静寂の透明な部屋 君と僕が一人
淡い蒼を握り締めて深淵から空を見る
君がくれた雪は溶けてごうごうと僕を飲み
柔らかな透度を重ね水面を書いた
素晴らしいこの世界で万物の隙間の光を縫いながら
君という幸いを塗りつぶさぬように今融けだした
真っ白な二相形の冷たく透き通った世界は
僕のすべての幸いをかけて誰も苦しまぬよう春を迎える