キミに捧ぐ 4
アナタには幸せになってほしい。その思いに嘘はない。
なのに…「おめでとう」が言えない。
「カイトの歌で素敵な曲になったよ。ありがとう。」
俯いたまま黙り込んでいた僕にアナタはそう言ってから部屋を出て行く。
…パタン。 ドアが閉まるのとほぼ同時に。
耐えていた涙の粒が頬を伝って、ポタリ。持っていた楽譜に落ちて染みていく。
譜面の裏に書かれてた文字が涙で滲む。
“かけがえのない大切なキミに捧ぐ”
ああ。僕は幸せだ。
アナタにとても、とても大切なものをもらった。
もう何も望んだりしない。
言葉では表現できない感情が胸にこみ上げて来て
僕の眼からまたひとすじ涙が零れ落ちた。
今だけ。明日からはもうアナタを想って泣かないから…。
■初見の方は↓の関連する作品から(1~3)見ていただけると嬉しいです。
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