アメジストの薔薇
15作目です。あっさりめのタンゴにしてみました。
男性目線の詞は今回が初めてです。
薄曇りの窓辺にたたずむ
モデルと見紛う程の美女
吸い込まれるように店のドア
開けてさまよう 距離は遠く
ベルの音に振り返る 白い肌に惑う
物憂げな表情(かお)に魅かれ
メニューも決まらないまま
グラスのコーヒーゼリー 口に運ぶ眼差しは
か弱さも見せないで ただ人形のよう
届いたダージリンティー 魔力めいた胸騒ぎ
いきなりの恋なんて実るはずもないのに
しばらく後 彼女は出てゆく
姿を追うのは気が引けた
次の日から彼女を探して通ってみても姿はなく
偶然その日寄っただけ
あきらめて メールを見始めてベルが鳴った
彼女にまた会えたんだ
あの日と同じ席を選んだのは何故だろう
待ち人いるのならば何て淡い姿
きらめくジュエリーさえ1つもなく凛として
この場に光っている これを恋と呼ぶのか
不意に話し声聞いて 僕は耳を澄ます
匂わせた恋の悲劇 目を閉じ聞かぬ振りした
他人の出る幕ではなかったのさ 僕もまた
彼女は破れた夢 背負った薔薇の花
つまらぬ軟派ごころ 口に出さずほっとした
ただ君の悲しみが癒えることを祈ろう