【童話?】不思議の国の黒いアリス 4
▼ハートの女王
そこは女王さまの庭ですから、大きな薔薇の木の下に女王さまがいて、その根元に優雅な仕草でワインを注いでいたとしても、(少なくとも不思議の国では)何もおかしな事はないのです。
女王様はクリーム色の、レースをふんだんに使ったバッスルドレスを着ていました。襟の詰まったドレスは、緑も鮮やかな芝生の上に裾を引いています。結い上げた瑪瑙色の髪には、王冠はつけていませんでした。
「あら」
前触れなく手を止めて顔を上げた女王さまは、よく熟したラズベリーみたいな赤い睛をしていました。
「ようこそ、かわいいお嬢さん。私はこの国の女王です。あなたのお名前は?」
その睛を細めてにっこり笑った様子は、女王さまというよりは、家の中で大事に大事に育てられたお嬢さまのようでした(それがいい事か悪い事かは別にして)。
これまで女王さまに会った事なんてなかったアリスは、どうしたらいいのかよくわかりませんでしたが、とりあえずスカートの裾をつまんでお辞儀をしました。
「アリスと申します、女王さま」
女王様は長い睫毛に縁取られた睛を瞬いて、ワインの壜を抱え直しました。
「まぁ、あなたが黒いアリス?」
黒いなんて言ってません。
アリスは心の中だけで呟きました。確かに黒いし赤いのですが、どうしてここの人たちが色にこだわるのか、アリスにはわかりそうにありません(仕方がありません、白いアリスについては誰も説明してくれなかったのです)。
「ごめんなさいね、こんな格好で。あなたはまだ来ないものだと思ってたの」
「あ、いえ」
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http://piapro.jp/content/b64xcn52t3wld6ftの続き。
女王様のエピソードがなかったので急造したら、雰囲気が違ってしまいました。
今回はレースを重ねてる時が一番楽しかった。
前のバージョンに続きますが、絵は変わりません。