最近の投稿作品 (6)
- 歌愛ユキ
- あぺれん
-
「Breath of mechanical」書いてみた2
2009.09.24 02:34
眠れなくて、居間で本を読んでいた私の前に、彼が現れた。プライベートの時間は絶対に電子ピアノの前から離れない彼が目の前にいるのを、私は怪しんだ。そして、心配した。
「どうした、」
私は立ち尽くす少年に話し掛ける。少年は、何も言わないで、俯いたままだった。
少しずつだけど、彼の顔に、表情が生まれ始めている。私はそれを嬉しく思っていた。しかし、まさか泣くとは思っていなかった。
-
「Breath of mechanical」書いてみた1
2008.12.14 16:48
「……雪」
とうとう降ったか、と、私は暗くなり始めた空を見つめる。
何か用事があったわけではないのだけれど、ただ何となく、外に出てみたかった。それだけの理由で人通りの多い大通りを歩くのはいささか馬鹿らしいだろうか。
私は人混みがあまり好きでは無い。流れる人々に、くらくらする。耳を掠める話し声に、怯える。
-
無限ループってこわくね?
彼は最近身の回りで変なことが起こることに気がついた。それが起こる条件があることも最近知る。第一に、雨の日でなくてはいけない。第二に、風邪のない日でなければいけない。これは条件とは異なるが、第三に、呼びかけられたら返事をしなくてはならない。
「ミナキ、ミナキ。」
ミナキ、とは、彼の名前である。ミナキは傘を差しながら人通りの少ない路を歩いている。立ち止まって、咳払いを一つ下あとに、「ハーイ」
と返事をする。呼び声は無くなった。この呼び声はとても特殊な声としてミナキの鼓膜を振るわせる。まるでおんさみたいにぽわあ、と響いて、振動しているおんさを不意に掴んだ時みたいに唐突に消える。ミナキはこの音が嫌いだ。びっくりするのだ。波動の作るまどろみに浸かりかけた瞬間に朝に急にビンタで誰かに起こされた気分になる。ミナキは想像して顔をしかめた。
「ミナキ」
-
リフレクトを聴いて勝手な解釈をし、それをもとに小説を書いた
雨の中を歩いた。僕はいつでも雨の中を歩いた。雨が降れば外へ出かけた。雨の日は好きだった。晴れの日は嫌いだった。そこにどんな理由が必要なのだろう。好きなものに理由は要らない。だから僕は、それと同様に嫌いなものには理由はいらないときめこんでいる。
僕は僕が嫌いだった。僕はいつでも僕を嫌った。雨はそんな僕を守るように僕を濡らしてくれる。雨は僕と僕以外の繋がりを完全に断ち切ってくれる。雨に濡れれば、僕は雨の一部になったような感覚を覚える。雨は自分自身の一部になろうとしている僕を干渉もしないし、歓迎もしない。どうでもいいもの、と分類されている自分に僕は陶酔している。
そんな僕を、万人は口を揃えておかしいと言う。
この場合の適切な対処法は、僕は僕が正しいと思うことだ。つまり万人の感性がおかしいと言う事にしている。そうすれば万人にあわせて、そこに疎外されないように自分を殺す必要なんて無い。僕は万人の住む世界に疎外されるより、僕を殺す事の方が苦しい。何故なら、自分を殺すと言う事は、僕自身の存在を肯定することに繋がるからだ。僕は先にも述べたように、僕が大嫌いなのだ。
独りが心地よくて、今日もこうして、僕は雨の中をゆく。