桜、桜、何故散り急ぐ 夕暮れ風がお前を攫う
祀り花に、荒ぶ村雨 地に塗るより先に舞い上がれ
烏溶かした濡れ墨の 仮名書き記す御伽草子
白紙、乾かぬ紙狭間 滲む合わせの鏡文字
頁の陰に挟まれていた 桜の花の残り香は今
お前が裏か私が裏か 語れ栞葉枯れて尚
桜、桜、何故咲き誇る 攫われるため咲くはずもない(お前は咲くか)
祀り花を手向けるよりは 君を隠すための雨になろう
桜、桜、何故帰らない 街と私は時雨に濡れて
傘を捨てて涙を隠し 君を守るための影になろう
移る憂き世は物悲し 心惑わすは御伽草子
白紙、破られ薄墨の 人垣が問う鏡文字
常しえの春、岩戸の内か 嘆きのための歌谺
お前が夢か私が夢か 噤む言の葉、今何故に?
桜、桜、君に会いたい 愛しい君の髪を撫でたい
祀り花を手向けるよりは 君を帰すための刃が良い
桜、桜、何処で咲くか 奪われるため生まれ出ずるか
桜、桜、君が泣くなら 君を散らすための雨となろう
桜、桜、君が恋しい 君を守る腕今無くとも
祀り花を手向けはしない 君を帰すための剣になる
桜、桜、今散り急ぐ 夕暮れ風が私誘う
祀り花に、荒ぶ村雨 血に塗れるより先に舞い上がれ
君を守るための影となろう
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