喉の小骨


《A》
ふと思いだした
燃えるような夕焼け

喉に刺さった骨が
抜けなくなって

強く背中を叩く手の優しさを
もうずっと昔のことだ

《A2》
朝から何だかざわついている
こめかみを締め付けてるような
この場所と行動の原動は
正しいものなの？

胸に空いた穴塞ぎたくて
消えない頭痛を忘れたくて
耳に入るバッドニュースごと
缶コーヒーで流した

《B》
本当かなんてわかんなくて
嘘をついているフリをした

喉で引っ掛かっている
ずっと前から気付いていた

《C》
のらりくらりの帰り道
怖い怖いは避けていた
刺さった骨はとうに抜けて
ただ痛みだけが残っている

ぬるいぬるい答えで洗い流したかった
甘い甘いのど飴で跡形も残さずにさぁ


《A》
そのままでいいなんて聞くたびに
ひっかかっている後悔が

泣いたっていいなんて台詞に
胸に溜まるものの正体が

自分はこうだと口にする度に
なくなっていく将来像

「上手い生き方教えて」って……
感情がスタックした


《A2》
有耶無耶を恨む裏の心の不和
露呈してく朗々の狡猾さが
粉々に欠いた裂いた悠々の想像は早々に
恐々に変わっていく


《2C》
酷く痛むわけでもないが
握り締められているような
「何もない」知った　現実で
緩やかに鼓動は止まっていく


《D》
もうストーリーにさえならなくて
盛り上がるには低すぎるからさ

曇天の向こう　群青の先
ひっかかった何かが響いている


《ラスC》
奧の　奥で　歪む言葉
声にならない　ほどでもないが

どうせなくなってしまうのなら
繋いだ傷ごとプライド作って


甘い甘い答えじゃ
洗い流せなかった

暗い暗いポケットの中で
光った刃を喉元にかざした


月の灯りはとうに消えた
僅か残った違和感はまだ

喉の奥にしがみついてる
いつか雲を開く
痛みと夜明けの唄