
雨の中を 傘をゆらして
静かな路地を ただ歩いてた
一際 大きな 木の根元で
君が 空を見上げていた
ボクに気づいた君
視線が交わって
ボクは足を止めた
逃げるそぶりもなくて
でも 近づくでもなくて
まるで ここが自分の場所だと
知ってるような顔をしてた
水たまりに映った背中
少しだけ濡れたしっぽが揺れてた
誰にも触れられない静けさの中
ボクは ただ そこにいた
雨を避けた 根元の影で
君はまばたき ゆっくりひとつ
くる日も こんな風に
誰かと過ごしてきたのかな
声をかけることもなく
同じ時間(とき)だけが
ゆっくり流れてく
ポケットの中の手を
出すことはなかったけど
ひとことだけ 思ったんだ
強く 生き抜いてほしいって
名前も呼べないままだけど
君がそこにいたことを忘れない
言葉も交わさず交差した午後
ボクの心に 雨が染みた
空がほんの少しだけ 明るくなって
君はひとつ 伸びをして立った
行き先なんて わからないけど
きっと 大丈夫だと思えた
ぬれた足あとは 消えてしまうけど
あの時間は たしかに ここにあった
またこの場所で 会えたらいいなって
ささやかな 楽しみができた
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