沙織
どこだろうここ…私どうしてこんなところに。
私…私は…誰?
何。何が起こってるの…?

フェードアウト

入店音

空「ただいまー」
李音「おかえりなさい、空君。学校はどうでした?」
空「んー、今日もまあまあだよ。とにかく野小野寺が鬱陶しい。俺がちょっと女と一緒にいるだけであーだこーだ騒ぎやがる」
李音「あはは。空君は本当小野寺君に好かれていますね、今度遊びに来て頂いたらいかがでしょう?」
空「やだよめんどくさい」
サラ「あんた友達いるんだー。チャラそうな見た目してさ」
空「ああ、お前居たの?また株やってんのかよ。金金ってがめついな」
サラ「はあ?その伊達眼鏡割って欲しいの?」
空「あん?やるかオラ」
李音「こらこら、喧嘩しないでくださいよお二人とも」
空・サラ「だってこいつが!!」
李音「うわあ。ベタなくらい仲が良いですね」
サラ「うるさい。あたし今あんたらに構ってるほど暇じゃないの」
空「俺だってお前に構ってるほど暇じゃない。株ばっかやって店番サボんなよ?」
サラ「あんたが帰って来たんだからあんたが店番すればいいでしょ」
空「俺もやるけどお前もちゃんとやれよこの給料泥棒」
サラ「これっぽっちの給料なんて惜しくないですー。株の方がバンバン儲かるし」
空「じゃあお前もう出てけよ仕事の邪魔」
サラ「男ばっかでむさくるしいのより花があった方が良いに決まってんでしょー?」
空「お前が花とかここはいつから葬儀屋になったんだよ」
李音「もー、お二人とも……」

入店音

李音「いらっしゃいま…せ」
空「うん?」
李音「空君お客様です。眼鏡、外してくださいますか?」
空「ああ。(間をおいて)いらっしゃいませ」
沙織「あの、ここって……」
李音「いらっしゃいませ。ここは時計屋です。なにかお困りの事でも?」
沙織「時計屋さん……?なんであたし時計屋さんに」
空「何か困ってるんなら、話、聴きますよ」
沙織「ありがとうございます。でも、時計屋さんに言っても意味ないかもです。病院にいった方がいいんでしょうか。気付いたら何も分からなくなっていたんです」
李音「と、言いますと?」
沙織「何も分からないんです。何も覚えてなくて」
空「記憶喪失、だってことですか」
沙織「はい。それでなんとなくこのお店に入ってきちゃって」
李音「そうですか。しがない時計屋ですが、お役に立てれば嬉しいです」
空「しかもそれ、病院に行っても意味ないですよ」
沙織「え?」
李音「どうでしょう。もしよろしければ、今日一日こちらの空君お貸しいたします。少し色んなところを回っていれば、記憶の手がかりもあるかもしれません。お一人ですと危ないので、お供にでもいかがでしょう?」
沙織「え、そんな、お仕事中じゃ……」
空「いいですよ全然。もう一人店員いますし、役立たずですが」
ワンテンポおいて
沙織「え、あの」
李音「お気になさらず、そんな混むお店でもありませんし」
沙織「……ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
空「はーいはい。改めまして、空っていいます」
沙織「始めまして、私、沙織っていいます」
李音「ご自分の名前は覚えてらっしゃるんですね?」
沙織「え、はい……どうしてでしょうね」
空「まあ、ゆっくり外でもあるってみましょう。じゃあいってきます」
沙織「い、いってきます」
李音「はい、お気をつけて」
出ていく音
(少しの間)
サラ「ねえ……」
李音「はい?」
サラ「今、誰かいたの……?」



沙織「あの、お仕事中でしたのにすみません」
空「いや、気にしなくていいですよ、どうせ暇ですから。それに……困ってる女性を放ってはおけないですからね」
沙織「えっ。あ、ありがとうございます……」
空「さて、どこに行きましょうかねえ。とりあえずその辺をふらふらしてみますか。気がついた時、何処に居たか覚えていますか?」
沙織「はい。じゃあそちらに向かってみましょうか」
空「はい、案内お願いしますね」


李音「サラさん。今朝の新聞を持ってきていただけますか?どうせ株のチェックで使っていたでしょう?」
サラ「何よその言い方。ホラ、これよ」
李音「ありがとうございます」
サラ「ねえ、さっきのって」
李音「ええ。まあ、空君が適任でしょう。ほら、この記事ですね」
サラ「ふうん…結構近いのね、ここ」
李音「みたいですね。僕は先ほどの方のお宅にお伺いしてみます。店番おかませしていいですか?」
サラ「まあ、どうせ誰も来ないけどね」
李音「あはは、そうですけど。では、お願いしますね」
出ていく音
サラ「交通事故……ねえ」


空「ここですか」
沙織「はい。気がついたらここに」
空「そうですか。このあたりに見覚えは?」
沙織「家の近くではないですね……あるようなないような。でもなんだか、あんまりいい感じはしません」
空「……ふむ。嫌な思い出がある場所なのかも知れませんね。記憶が無くても体ってそういうの覚えてるものなんですよ」
沙織「そうなんですか?」
空「はい…。例えば地縛霊とかがそうですね。生前思いの深かった場所に、彼らは無意識に現れてしまう。それはきっと体が覚えているからなんでしょう」
沙織「霊とかって、やっぱり本当に居るんですか?」
空「いますよ。俺、そういうの詳しいんで。実家が寺なんですよねえ」
沙織「そうだったんですか。あの…じゃあもしかして」
空「ええ、見えますよ。そういうものが。生まれつきそういうの強いみたいなんですよね、家のせいかは知りませんが」
沙織「怖くないんですか?」
空「ええ。ちゃんと意思の疎通が図れれば怖くなんてないですよ」
沙織「そ、そうなんですか…」
空「ええ、だからはっきりと覚えてはいなくても、体は自然にその場所に向かってしまうんです。記憶をなくした貴女のように」
沙織「嫌な思い出……」
空「その感覚が、思い出すきっかけになるといいですね。思い出したくない事かも知れませんが……あ、」
沙織「え?」
小野寺「おー!空くんじゃないですかー」
空「めんどくさいのがきた」
小野寺「めんどくさいのってなんだよ。なんだよおおおおお」
空「うるさい」
小野寺「今日もクールだねえ。何何?お散歩―?それとも、お前もやじ馬根性?」
空「やじ馬?なんかあったのか」
小野寺「なんだ知らないのか。三日前の夜ここで事故あったらしいぜ。俺等と同じくらいの女の子が轢かれたらしい。かーわいそうだなー、新聞に写真のってたけど、結構可愛い子だったぜ」
空「事故ねえ」
小野寺「まあ、流石に三日経ってるからもう誰もいないけどよー。ちょっと寄ってみたんだわ」
空「ふうん。まあ、俺は散歩ってとこだよ。鬱陶しいからはやく帰れ」
小野寺「つれねーなあホント。いいじゃんヒマならどっか行こうぜ」
空「暇じゃないから帰れ」
小野寺「ちぇっ。じゃあまたあした学校でなー」
空「おう」
(間をおいて)
沙織「学校のお友達ですか?」
空「まあ、友達って言うか、同じ学校に通ってるだけと言いたい」
沙織「仲、いいんですね」
空「まさか。鬱陶しいですよ。沙織さんはおいくつなんですか?僕と同い年くらいに見えるので、学校とか通ってたのかもしれませんよね」
沙織「……わからないです」
空「……そうですか」
沙織「すみません」
空「謝らなくていいんですよ。ゆっくり思い出してきましょう。次はどこへ向かいましょうか。特に何もなければ、この辺りをぶらつきましょう」
沙織「はい」

小野寺「おっ。おねーさんこのあたりじゃ見かけない顔ですね。僕とお茶しませんか」
私「えっ。いえ、今仕事中ですので」
小野寺「あーららっ。フラれちまったなあ。おねえさんお仕事なにしてんの?」
私「私は、ジャーナリストです。フリーの」
小野寺「へーえ。かーっこいい♪じゃあ事故の事調べにきたの?」
私「事故?」
小野寺「あれ?ちがうの?三日前にここで起きた事故だよ。女の子はねられたやつ」
私「いえ、知りませんでした。少し興味がありますね…お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
小野寺「よろしいですともー。じゃあ立ち話もなんだしどっかでお茶しましょうか。
ねっ」

入店音
サラ「あら、早かったのね」
李音「ええ、まあ少しお邪魔してきただけですし」
サラ「それで?」
李音「この鳩時計を拝借してきました。ですがこれは、沙織さんが帰ってきてからにしましょう。もう一か所ちょっと行っておきたいところがあります。店にはこれを置きに来ただけですので」
サラ「はいはいいってらっしゃい。どうせお客なんてめったに来ないんだから」
李音「まあまあそんな言い方なさらずに。では行ってきます。速人くんがかえってきたらおやつを上げて置いてくださいね」
サラ「あたしのはー?」
李音「サラさんさっき食べたでしょう。速人くんの分食べてしまわないでくださいよ?」
サラ「さあどうかしら?あいつの態度によるわ」
李音「ちょっと心配ですね、まあとりあえず頼みましたよ」
サラ「はいはい」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

刻音2話案(1)

(・ω・*)

閲覧数:107

投稿日:2013/07/09 00:34:10

文字数:3,708文字

カテゴリ:その他

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