はじめに
歌詞を考えるときは曲も同時に考るべきです。アートとしての歌もありますが、歌は基本的に話し言葉の延長であり、歌は演劇であり、語調の合致がそのまま演技力となります。メロディ、歌い方、歌詞の内容が合っているべきです。
歌詞の内容を分かりやすくするために、文脈の流れをなるべく単純にしないといけません。
その歌詞の何が面白いのか、はっきり認識を持っていないといけません。聴く側の需要を考え、需要のありそうな内容を考え、形にしていきます。
1.歌詞の内容
1.1.憧れる人物像を作り出す
自分(聞き手)にとって都合のいい人物像、希望を持たせるような人物像を作ります。
前者は例えばコチラ(マイケル・ジャクソンの『Billie Jean』)。
She was more like a beauty queen from a movie screen
(彼女はまるで銀幕の女王)
I said, don't mind, but what do you mean I am the one
(僕は彼女の誘いに乗ったが、どうして僕じゃないと駄目なんだい?)
自分を誘惑する美女がそれにあたります。『Yah Yah Yah』の、誰かを勇気づけている人物であったり、『タイミング』の、その場を和ます人物であったり、形は様々です。(ボカロの場合は基本的にエロ、萌えの路線じゃないだろうかと勝手に思っています。)
後者が例えばコチラ(レディー・ガガの『Born This Way』)
"There's nothin' wrong with lovin' who you are"
“ありのままの自分を愛することに間違いなんてないわ”
She said, "'Cause He made you perfect, babe"
ママは言った、“神様があなたを完璧にしてくれたから”
"So hold your head up, girl and you you'll go far,
“だから顔をあげなさい、そうすれば遠くに行けるわ”
Listen to me when I say"
“私が話してる時はちゃんと聞きなさい”
ここではガガの母親がそれにあたります。あまり使いどころがないように思います。
1.2.なりたい自分を表現する
歌は基本的に聞き手が歌の主人公になりきって楽しむ物です。基本的に2パターンです。
情熱の真っ赤な薔薇を
胸に咲かせよう
花瓶に水をあげましょう
心のずっと奥の方
(THE BLUE HEART『情熱の薔薇』)
アニソンでもJ-POPでも洋楽でも、こういう、非常に積極性や攻撃性のたくましい人物を描いている例を沢山見かけます。女性シンガーでは多かったものの、男性シンガーでセクシーな自分を表現するという路線を追求したMaroon5は真骨頂であります。例を挙げ始めるとキリがありません。逆のパターンもあり、
僕は透明人間さ きっと透けてしまう
おんなじ人には分かる
噂が走る通りは息を吸い込め
止めたままで渡ってゆける
(東京事変『透明人間』)
影が薄いことをカッコよく表現して、なんとなく正当化したようになっている、自己告白型のものもあります。得てして厨二病的なニオイがします。『ヒトリノ夜』のように、他を否定して遠回しに自己肯定しているものや、『Smells Like Teen Spirit』のように、クズとクールが紙一重な人物像を、100%クールなものとして描いているものもあります。
なりたい自分を表現するという系統の曲は、メッセージ性が強いものもあります。
I'm Starting With The Man In the Mirror
(鏡の中の自分自身から始めよう)
I'm Asking Him To Change His Ways
(自分自身に問いかけよう)
And No Message Could Have Been Any Clearer
(これほど明確なメッセージはないだろう)
If You Wanna Make The World A Better Place
(世界をよりよくしたいなら)
Take A Look At Yourself And Then Make A Change
(自分自身が変わらなきゃ)
(マイケル・ジャクソン『Man In The Mirror』)
1.3.ストーリーを描く
事件(とその解決)を描くこと、意外な展開を作ること、楽しい場面を描くことの3種類があります。
事件を描いている例。
I used to rule the world
(かつて私は世界を支配した)
Seas would rise when I gave the word
(言葉一つで海をも割った)
Now in the morning I sleep alone
(今は朝起きても一人)
Sweep the streets I used to own
(かつて自分の物だった道を掃く)
(ColdPlay『Viva la Vita』)
革命で零落した王様の話。危険性、不安、不幸、障害といったものがここでいう事件です。
意外な展開を持たせている例。
旅人に尋ねてみた どこまで行くのかと いつになれば終えるのかと
旅人は答えた 終わりなどはないさ 終わらせることはできるけど
そう…じゃあ お気をつけてと見送ったのはずっと前で
ここに未だ還らない
彼が僕自身だと気づいたのは
今更になってだった
(ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』)
どういう意味なのかよくわからないのですが、とにかく意外性のある展開になっている。昔の詩が意味不明な言葉まわしや展開で書かれているのは、今の歌詞にも通じます。同様に、洒落た言葉回しや、洒落た設定も大事ですが、分かりにくくなったり、面白さの核を見失ってはいけません。サブカル音楽はシャレすぎた結果です。
I just called to say I love you
(ただ君に愛してると言いたくて電話したんだ)
I just called to say how much I care
(君がどれほど大事か分かってほしい)
I just called to say I love you
(ただ君に愛してると言いたくて電話したんだ)
And I mean it from the bottom of my heart
(心の底からそう思っているんだよ)
(スティービー・ワンダー『I Just Call To Say I Love You』)
こういう明るいシーンを描く際は、臭くならないよう、現実性との折り合いをつけなければいけません。
1.4.楽しい情景を表現する
事件を与えるのは情景ではなく設定や登場人物です。けれども、その風景が現れたら反射的にある感情が起こるというものがあります。趣、旅情と呼ばれる物がそれだと思います。曲調も情景を表現する物でなければいけません。
夏がすぎ風あざみ
誰の憧れに彷徨う
八月は夢花火
私の心は夏模様
(井上陽水『少年時代』)
若者なら夏の終わりは切なくなります。
アンダルシアに憧れて バラをくわえて踊ってる
地下の酒場のカルメンと 今夜メトロでランデブー
ダークなスーツに着替えて ボルサリーノをイキにきめ
いかすクツをはいた時に 電話がオレを呼び止めた
(ジャニーズの色んなグループ『アンダルシアに憧れて』)
アンダルシアはスペインの街ですが、知らなくともスペインっぽい色気と硬派さがにじみ出てきます。作曲者はパンク王子真島昌利。ヒャッハー
風景とか雰囲気とかいっても、それが琴線にくるかどうかは判断しづらく、センスの問題です。
1.5.切なさ
普段は気にしないでいい、物事の虚無的な本質を描きます。
僕らはきっと待ってる 君とまた会える日々を
さくら並木の道の上で 手を振り叫ぶよ
(森山直太朗『さくら』)
とにかく「ずっと一緒だった人との別れ」というパターンが9割以上ではないかと思います。
ほかにも、よく考えてみれば悲しいことなどを掘り下げて描く方法があります。
やがて誰も恋に落ちて 愛の言葉と
理想の愛 それだけに心奪われた
生きるために 計算高くなれというが
人を愛すまっすぐさを強く信じた
(尾崎豊『卒業』)
生きるために計算高くなれ、とされるような世の中が悲しいことにあたります。実に厨二病だ。
1.6.笑い、知的感動、etc
その他の路線を極めればサブカルとなるわけであります。
ぼくはくま くま くま くま
車じゃないよ くま くま くま
(宇多田ヒカル『ぼくはくま』)
最高にレベルの高いメロディに最高に意味不明な歌詞…、続きもシュールです。
ポストパンクなどは新しいが、新し過ぎて誰もやらない音楽を極めていて、俺のようにそれを好む人はキワモノと言っていいのではないでしょうか。
2.メロディの種類
分かりやすいメロディを作るなら、音の動きが不規則な部分ではテンポを早く、音の動きが綺麗なハーモニーを作る部分ではロングトーンにするのが基本です。
2.1.感情のタイプ
2.1.1.真剣な声
何かしらの事件に立ち向かっている、そういう声です。同音連打が似合います。華麗なメロディラインを崩さないようにします。
2.1.2.楽天的な声
楽しいことを享受している、そういう声で、音の上下やスタッカートが似合います。
2.2.声のタイプ
2.2.1.叫び
強い自己主張や、強い喜怒哀楽を表現した、強いハイトーンです。ソウルミュージックで欠かせない要素だと勝手に思っています。短い方が自然ですが、ロングトーンにするならこの場面です。
2.2.2.力強い声
叫びまでとはいかない声です。行動的な主人公を表します。英語圏の歌では鬱歌でもスタッカートを自然に使えてうらやましい。
2.2.2.ささやき
リラックスや、元気の無い様子や、自分自身、近い人への問いかけを表します。耳元でささやくようということで、密着感を表し、セクシーな表現にも使われます。順次進行が一番似合います。
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