1
気づけばここにいた。
暗いのか明るいのか、狭いのか広いのか、なんだかよくわからない場所に。
遥か遠くに自分と同じ仲間がいるような気がするのだが、きっと会うことはないだろう。
けれど私は一人ではなかった。私の周りにはいつだって“彼ら”が居た。
彼らは多分、私を守っているつもりなのだと思う。
私と同じような形をして、私を取り囲んでくるくると周回している。
近づこうとしても、私から一定の距離を保っていて近づくことは無い。話しかけてみても返事は返ってこない。
そして彼らがいるせいで、私は自由にすきなところへ行くことが出来ない。まるで彼らに歩かされているようだ。
私の歩む道は決められている。
つまり、私は一人ではないが、独りだったのだ。
2
どこにも行けない、誰と話すことも出来ない。
そんな私にも、ひとつだけ所有を許されているものがあった。
誰が与えたのかは知らない。いつ与えられたのかもわからない。
こんな私でも、ただひとつだけ、名前を持っていた。
名前とは何かを呼ぶときに使うものだ。
よって、名前があるということは誰かが私を必要としているということなのである。
必要の無いものに名前など無いのだから。
自ら口にすることは無ければ、誰かが私に呼びかけるわけではないが、私はそれを持っていることが嬉しかった。
どこか知らない遠い場所には、私の名を呼ぶ誰かがいるのだ。
3
私には隣人がいた。
隣人と言っても遠くに時折見えるだけで、当然話したこともなければ近くで見たことも無い。
そいつにはどうやら放浪癖があるらしく、久しぶりに見たと思えばいつのまにかいなくなってしまう。
隣人とはいえないかもしれない。だが、適当な言葉が見つからないのでとりあえず私は隣人と呼んでいる。
隣人はいつだって何かに耐えるようにはいつくばり、がたがたと震えていた。
憶測に過ぎないが、あんなに震えているのだから隣人の居るところはきっととても寒いということなのだろう。
私と同じように隣人にもやはり周回する“彼ら”が居るのだが、やっぱりただただ一定の距離を保ち、傍観しているだけなのだ。
可哀相に。あんなに凍えて。
しかし、そんな隣人を可哀相だと思う反面、どこか安心している私がいる。
他人の不幸を目の当たりにして安心を覚える。そういう自分を醜いとは思わない。
そういうものなのだと思う。
4
どうやら、私につけられた名前はなくなってしまったらしい。
誰に教えられたわけではないが、ある日突然理解した。
否、理解せざるを得なかった。
思い出せなくなっていたのだ。私に与えられたたったひとつの、大切なものを。
私につけられた名前は、亡くなってしまったのだろう。
遠い場所で、誰かに必要とされていたはずの私。
そうだ。名前がなくなってしまっても、私は消えないんだなあ。
誰にも必要とされなくたって、存在することは出来る。たったひとりでも、存在し続けることは出来る。わかっていたけれど。
さよなら。
わたしのなまえ。
さよなら。
誰かに必要とされていたわたし。
さよなら。
さよなら。
“冥王星”
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ご意見・ご感想
planetype
ご意見・ご感想
はじめまして。拝見させていただきました。
詩的な文章で、感性を感じさせられるものがあり、思わずブクマさせていただきました。
絵師さんとしても活動なさっておられるようで、「サイハテ」の淡いタッチに惚れました。
今後ともストークさせていただきますので、絵文共頑張ってください。
2010/03/17 18:15:27
鶸(ひわ)
はじめまして。読んで頂きありがとうございます。
VOCALOIDが出てこない話なので少し不安だったのですが、気に入って頂けて嬉しいです!
絵のほうも見て頂いたようで…!こうして嬉しい言葉をいただけると励みになります。
これからも作品をあげて行きたいと思っているのでどうぞよろしくお願いします。
メッセージありがとうございました!
2010/03/18 22:03:05