「ヒーローは窓から登場する！」

「さあ、星を見に行こう！」
キミの家族とボクの家族　１０年前にピクニックした　あの丘へ
今日は天気が良いから
きっと見れるよ　満天の星
ボクの上着を貸してあげるね

傷つき冷たくなっていた逃げた小鳥の末路を挙げ
「羨ましい……」と言ったキミは
都会の病院の窓越しに
見えない星を仰いで夢みる
「満天の星空がみたい」

自転車を停めて見上げる　２階角の病室
暗い窓の奥に　ぼんやり明かり
まだ起きてるの？
非常階段からキミの窓へ
「迎えに来たよ！」
めいっぱいの笑顔つくって　手を差しのべる

「さあ、星を見に行こう！」
驚きつつも手を預け
「懐かしいな」とキミは笑う
仕置きで物置に閉じ込められた幼いキミを　
連れ出したのも窓からだった
憶えてたんだね

「ワクワクするね」「私、悪いコだ」
自転車の生む夜風に吹かれ
背中のキミは楽しそうに
郊外のあの丘への道中
真夏の夜のやわらかな空気
デジャヴにキュンとなるのはボクだけ？

キミを乗せたまま押して登る丘
「ゴメン、重いよね」窺うキミ
頷いたボクの首を絞めて
「ひどーい！」と笑う
ホントは全然重くなんてない
ひとつひとつが伝える現実（ざんこく）悲しいよ

「さあ、星を見に行こう！」
次第に多くなっていく星の数に
期待したフリしてボクは空を見上げる
今にも消えそうなキミの微かすぎる温もりに
涙こぼれ落ちてしまわないよう

「わあ、星が降ってきそう！」
丘の頂　満天の星に手を伸ばすキミ　輝く瞳
ボクには　星の仲間入りをしそうに見えて……
言わないけどね
笑っていようって決めたんだ

そう、ボクはキミのヒーロー
このあと帰って　ぶん殴られても
目を盗んで親指を立てて
キミに笑って見せてあげよう
窓から登場！　キミのヒーロー！
窓から登場！　キミのヒーロー！！！