最後の花火が上がる頃には

「最後の花火が上がる頃には」

最後の花火が上がる頃には
あなたにはきっと聞こえぬだろうが
最後の花火が上がる頃には
行かないでいてね

あなたが遺した憂鬱の数が
解れて残った幽かな香りが
一つひとつと消えていくような
あの音がまだ痛い

行かないで　行かないで
行かないで　離れないでいてね

消えないで　消えないで
消えないで　忘れないでいてね

最後の花火が上がる前に

最後の花火が上がる頃には
あなたにもきっと伝わるだろうか
青く淡く脆く華やいでいた
凛とした十五日の夜のこと

アスファルトに溶けたりんご飴も
いつかは消えてなくなるのでしょう
あなたに貰った言葉も記憶も
いつか消えてしまうのでしょう

なんて　もういいか
あなたがしたいならそれでいいさ
だって　もういいんだ
あなたはあの空に触れていた

目を塞いで　耳を閉じて
脳の奥で　君を見ていたんだ

「泣かないで、またね」なんて
きっとないね　まだ　まだ

行かないで　行かないで
行かないで　離れないでいてね

泣かないで　消えないで
消えないで　忘れないでいてね

最後の花火が今空に落ちてゆく

最後の花火が上がる頃には