集合的思索、或は環状の魔法

はじめて凱旋門の周囲を走る車列を見た時、全体的に見れば永遠に止まることなく続く円運動なんだけれども、それを構成する車をよくよく見れば入れ代わり立ち代わりしている様子に某思考実験よろしく、変化と持続を強烈に感じまして、それ以来私の中で円運動、環状の運動というのは永遠の変化と持続を示すアトリビュートになったわけです。

話を今回のテーマに戻しますが、初音ミクさんとそれを取り巻く創作文化というのは私にとって正しく「永遠、変化、持続」の具現化と言って良いものでした。あらゆるクリエイター達が作品を創り、それを観る人、聴く人がいて、それに感化された人がどんどん流入してクリエイターになる。新しい人が来れば環境も変化する。無論、いなくなっていく人もいる。でも確実に輪は持続し、それは永遠を予感させる力を持っている。凱旋門の円運動においてその要素は個々の車でしたがミクさんにおいてそれはミクさんに関わる人全員です。一人一人の創作という思索の集合です。それらが初音ミクという環状の魔法を創り上げ、今まで持続してきたんだと思います。したがってミクさん+遊園地というテーマを受けて私がメリーゴーランドか観覧車をモチーフとして採用するのは当然のことでありました。人々の想い=火花によってミクさんが魔法を起動しているというイメージにしております。

インフレーションによって永遠に広がり続ける夜空の中に、円運動をしながら乗り手が入れ代わり立ち代わりするメリーゴーランド、手元の円形に広がる花火、円形に展開される魔法陣など円を徹底的に使用し、その中心はミクさんにするなどして初音ミクさんの本質は「集合的思索、或は環状の魔法」であるという表現を目指してみました。