奇妙なサーカス 4
「本日の演目はこれにておしまいとなります。皆様、お気をつけてお帰りください。」
檀上でハクが生人形ーミクーを操り、カーテンコールをしていた。
ミクは極めて精巧にできていて、観客席からでは生身の人間と変わらないように見える。
むしろ、操っているハクのほうが人形のようにすら見える。
その幕内では・・・
「団長、初日にしては上々の入りですね。」
ネルが売上を数えながら、団長ーメイコーに声をかける。
「さぁ!ちゃっちゃと片づけて飯に食いに行くわよ!」
「おー」
「をー」
テトとネルが相槌をうつ。
今夜はどれくらいお金が持つか・・・・
カイトは盛り上がる女性陣を横目に溜息をついていた。
夕闇が村に迫るなか、一台の馬車が猛スピードで広場に入ってきた。
噴水の近くに馬車を止めると、すぐさま御者が大声を張り上げる。
「おーい!誰か手を貸してくれ!街道に子供が倒れていたんだ!」
騒ぎを聞きつけ人々が集まってくる。
「医者だ!医者を早く!ひどく弱っているんだ!」
「僕に見せてください。」
カイトが御者の前に進み出る。
「芸人に見せてどうなる!」
「僕は・・・芸人です。でも医術の心得はあります。」
「だが・・・」
「だから僕に見せてくれ!」
カイトの迫力に押され、御者は口ごもった。
馬車から降ろされてきた少女を見てメイコは驚いた。
「この娘は今朝の・・・」
「ネル!ハクとテトをすぐ呼んできてくれ!それと僕の医療鞄を!すぐに!」
「はっはい!」
ネルは這いながらも馬車にたどり着き、ネルとハク、テトを呼ぶ。
「ひどい衰弱だ。おまけに感染症も発症している。」
カイトの脳裏に戦場で倒れていった兵士の姿が浮かぶ。
助けられずに安楽死せた兵士の臨終の顔、顔。
「助かる、いや「助ける」!助けられる命を捨てはしない!」
テトとハクが運んできた鞄をひったくると、中身を床にぶちまける。
「ネルとテトは水を運んで湯を沸かして薬湯を作ってくれ!ハクは助手をしてくれ!」
「メイコは馬車からハンモックを取ってきて取り付けてくれ!急患なんだ!」
「わかったわ!」
カイトが必死で少女の手当をしている時・・・
暗い森を抜け、サーカスを探し出したレンが広場のテントを見下ろす。
「やっと見つけた・・・今リン助けてあげるから」
レンは懐の包丁の柄を握りしめた。
コメント0
関連動画0

ご意見・ご感想