奇妙なサーカス 7


「そんなつもりはないわ。」
メイコは静かにそう話した。
「あなたがやったことをあたし達がどうこうする気はない。あなた達がどんな状況なのかも知っているつもりよ・・・。」
(僕らの気持ちなんかわかってたまるか!)
そう叫びたかった。
声が出なかった。メイコの瞳には全てのことが見透かされているように感じたから。
「あなたたち・・・ここで働いてみない?。うちは人手不足なの。」
「誰が!」
レンがやっとの思いで声を張り上げる。
それでもメイコは動揺することなく話を続ける。
「今でなくともいいわ。あの娘ともよく話してね。」
それだけ話すと部屋を出て行った。
「聞いただろリン!あいつらは僕たちをこき使いたいだけなんだ。」
レンのその言葉を聞いてリンは俯き、そして静かに、やさしく話し始めた。

「レン・・覚えていないかもしれないけど、私たちが家で倒れていた時あの人たちは私たちを必死に看病してくれた。」
リンは語る。押し殺した感情をぶつけるように。
「私怖かった。レンが一緒にいてくれると知っても・・・。死ぬのは怖かった。」
「助かったとき私たちは死ぬんべきじゃない。生きていきたいと思ったの。」
「やめろリン!」
レンが叫ぶ。
「あの人たちは悪くないの!私が勝手に食べ物を取りにいったからなの!」
「やめろやめろ!」
リンがレンを抱きしめる。
「だから・・・生きていこうレン・・・」

三日後
サーカス団の中に双子の姿があった。
「最初に話すことがある。」
カイトがリンとレンにやさしく話しかける。
「君たちが僕らを信頼してくれなくてもかまわない。でも知っておいてほしい。僕らは君たちを信頼していることを。」
レンが口を開く。
「僕らも約束してほしい。僕らを置き去りにはしないでほしい。」
「ああもちろんだ。」
カイトがレンの頭を優しく撫でた。
「さぁ!出発だ!」


魔女と魔女の子分をやっつけたあの日、僕らは誓った。
ずっと、ずっと二人でいよう。
ずっと、ずっと眠り続けよう。
本当のおかあさん、おとうさんが起こしてくれるまで・・・
赤い髪のおかあさんと青い髪のおとうさんが起こしてくれた日、僕らは誓った。
ずっと、ずっとこの人たちと一緒にいよう。
ずっと、ずっとこの人たちと一緒に生きよう。
そして本当に笑いあえるまで生きていこう。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります

奇妙なサーカス 7

一段落したので設定を書いておきますね。

・団長 メイコ
    メイコは悪ノ召使の「赤い鎧の騎士」と同一人物。狡猾な大臣に騙され、芸人に身をやつしている設定です。
・副団長カイト
    悪ノ娘の青の国の王子とは関係はなく、メイコと同じ軍隊にいた軍医という設定です。
・人形使い ハク
      生人形「ミク」を操る人形使いといった設定。ミクとの因縁についてはお
いおいと。
・軽業師 ネル
     戦争孤児で、もと泥棒。官警から逃げる際、メイコとカイトに助けてもらっ
て以来サーカスに居ついた。
・演舞  テト
     箱にはいって海を漂流していたところを拾ってもらい、そのまま居つく。記億はなく、知っているのは異国の演舞や武術、自分の名前のみ。自分の年齢すらわからない。
・リン、レン、
 悪ノP様の「置き去り月夜沙」の主人公をイメージしました。
 

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投稿日:2008/10/17 20:47:10

文字数:984文字

カテゴリ:その他

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