雪解け迄に私に
応えて、応えて
あなたの呼ぶ聲がした
気の所為か
気の所為だろうね

嗚呼、ただ、ただ
文字を辿っていくから
まだ醒めない儘
夢に倣って
飢えを凌いで

悴んだ手にはモノクロ
栞挟んで仕舞うの？
終わりがまだ怖いのね
私とね
同じだね

燦燦と差す陽に背を向けて
感嘆符に似た心を探した
鍵括弧が愛おしくて
あなたの音が聲が聞こえる気がするの

捲り巡り戻り憤り言葉を欠いたって
悲しみが差すような物語にすら抗って
泣き聲も文字の上
私の慰めには意味など無いけど
少しだけ近付ける
気がしたの

其の淡い淡い言葉と
淡々と迫る終わりと
黒く暗く転げ落ちた
儘、立てやしなくて
目眩（めくる）めく頁（ページ）捲る前に
物語を終えようか

耳を澄ましても
まだ聞こえないようだ

なあ、まだ、まだ
あなたを知らないから
また会えないかな
積み上げたって
見えやしなくて

動かない身体と
指先なぞる言葉が痛いの
始める事を拒むのね
変わるのが
怖いのね

安閑を欠く詩に火を焼べ
また、疑問符に似た夢を描いた
丸括弧が知りたくて
私の音も聲も虚飾に近付くの

枯れ落ちた木々とアナクロの時計
秒針が刻む言葉に斜線を
会えて良かったと薄ら笑いを
浮かべた私の続きは無いよ
此れで良かったと本を閉じるの
私はまだ笑えていますか？

感情も無い儘、彷徨（うろつ）いた
濫觴（らんしょう）、春は疾（と）っくに過ぎていた
鍵括弧じゃ足りなくて
あなたの文字を忘れる事も出来ない儘で
雪は
遠く、遠くに消えていたの

雪解け迄に私に
応えて、応えて
あなたの呼ぶ聲がした
気の所為か
気の所為だと良いね