「紅、乙女桜」


千代の古より
伝わることわざを
あなたも御存知でしょう？

ひとつ
どこぞのいい女
狐狸妖怪の類
すべてはまやかしだわ

ふたつ
つまらない嘘なら
つかぬほうがましね
すべてはお見通し

みっつ
美しい花には
触れられないものよ
私の領域（テリトリー）ね

何処かで聴いたような古びた言葉だけでは
ちっとも満たされやしないみたい
この身体（からだ）
愛してるなんてもううんざりね
静かに蕾は今、芽吹きはじめる

咲いて　裂いて　乙女桜
消えぬは愛しの面影
紅く　紅く　空を染めて
おねがい　かなたへ　はばたけ

萌えて　燃えて　乙女桜
灯るは微かな篝火
紅く　紅く　灰となりて
忘られるでしょうか


千代の古には
なかった常識を
あなたは御存知ない？

馬鹿ね
美しい花にも
未練くらいあるわ
私の哲学（フィロソフィー）ね

誰もが詠んだようなお決まりの歌だけでは
ちっとも表せやしないみたい
この精神（こころ）
空蝉のなんてもううんざりね
確かに帳は今、上がりはじめる

咲いて　裂いて　乙女桜
癒えぬは嘗ての傷跡
紅く　紅く　肺を侵し
おねがい　わたしを　こわして

萌えて　燃えて　乙女桜
響くは叶わぬ約束
紅い　紅い　嘘となりて
散りゆくのでしょうか


咲いて　裂いて　乙女桜
消えぬは愛しの面影
紅く　紅く　空を染めて
さいごに　わたしを　みちびけ

萌える　燃える　乙女桜
満つるは己の〝恋唄〟
紅く　紅く　唐紅に
あなたにとどくまで


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※［］内は1音です


「くれない、おとめざくら」


ちよのいにしえより
つたわることわざを
あなたもごぞんぢで［しょう］

ひとつ
どこぞのいいおんな
こり［よう］かいのたぐい
すべてはまやかしだわ

ふたつ
つまらないうそなら
つかぬほうがましね
すべてはおみとおし

みっつ
うつくしいはなには
ふれられないものよ
わたしのテリトリいね

どこかできいたようなふるびたことばだけでは
ちいともみたされやしないみたい
このからだ
あいしてるなんてもうううんざりね
しずかにつぼみはいま　めぶきはじめる

さいて　さいて　おとめざくら
きえぬはいとしのおもかげ
あかく　あかく　そらをそめて
おねがい　かなたへ　はばたけ

もえて　もえて　おとめざくら
ともるはかすかなかがりび
あかく　あかく　はいとなりて
わすられるで［しょ］うか


ちよのいにしえには
なかあた［じょ］うしきを
あなたはごぞんぢない

ばかね
うつくしいはなにも
みれんくらいあるわ
わたしの［フィ］ロソ[フィ]いね

だれもがよんだようなおきまりのうただけでは
ちいともあらわせやしないみたい
このこころ
うつせみのなんてもうううんざりね
たしかにとばりはいま　あがりはじめる

さいて　さいて　おとめざくら
いえぬはかつてのきずあと
あかく　あかく　はいをおかし
おねがい　わたしを　こわして

もえて　もえて　おとめざくら
ひびくはかなわぬやくそく
あかい　あかい　うそとなりて
ちりゆくので[しょ]うか


さいて　さいて　おとめざくら
きえぬはいとしのおもかげ
あかく　あかく　そらをそめて
さいごに　わたしを　みちびけ

もえる　もえる　おとめざくら
みつるはおのれのこいうた
あかく　あかく　からくれないに
あなたにとどくまで