徒花　off vocal

それは多分、幼い頃の話

画面の奥、スピーカーの先には、誰の目にも明らかなヒーローがいた

鮮やかなシュートを決める彼、美しい旋律を奏でる彼女

そこに憧憬があった



それは多分、幼い頃の話

画面の奥、スピーカーの先には、誰の目にも明らかなヒーローがいた

世界を救う誰か、愛を歌う誰か、夢に生きる誰か

短絡的にそんな「誰か」を望んだ



それは多分、幼い頃からの話

画面の奥、スピーカーの先には、誰の目にも明らかなヒーローがいた

背が伸びるに連れて、鏡の中の着せ替え人形(私)に合うものは、段々と減っていった



気づけば平穏は、素知らぬ顔でそこにいて

緩やかな絶望(幸せ)を差し出している

開花の安寧に溺れて実をなさない花のことを

人は徒花と呼ぶらしい



花言葉もわからぬまま

朽ちてゆけば

どれほど楽か

吸い上げた水の重さに囚われて

萎れていく

花言葉も唄えぬまま

枯れ逝くのが

ありふれた日々と知らなかった

知りたくもなかった




テンポ　140
MP3　マスタリング済み
wav　2mix