『ツヅルモノ』

宛先なんていらない
手紙を書いているんだ
伝えたいことも上手く言えないけど
指先で思いの丈を綴る僕の歌
ひとりきり響き出した

いつも傍にあるのに
忘れて過ごしていくもの
それは知らない時が
幸せだという

目の前にはあるのに
拾うこともしないもの
それは偶然に僕の
胸の奥にいた

騒がしい街の焦燥に
紛れて消えていくのは
夢の中閉じこめた声
だから

宛先なんていらない
手紙を書いているんだ
言葉は音に誘われて戯れ合う
廃れた景色にも色を付け足せるように
拙くても書き続けよう

一瞬の出来事が
世界を変えてしまっても
僕に出来ることは
まだ何も無いまま

運命に躾けられても
時代が牙を向いても
あてどなく流れる時の渦へ

不格好な声でも
与えられるから
生まれてきたんだろう

弱いままいつしか
大人になってた僕の
臆病な思いが騒ぎ始めた
振り絞った声がどこにも届かなくても
いつかは伝えられるから

今、僕は僕に
手紙を書いているんだ
退屈な日々を優しく連れ出して
傍に置いておこう
きっと鳴り始めるコードを
いつまでも待ち続けよう