1、絡ませる

その手は、とても冷たい。まるで、冷気を放っているかの様に。だけど、僕にとっては誰のものよりも愛しい、彼の指。
「ねぇ。」
「ん? なんだ?」
そう言って振り返るキミの手と僕の手を絡ませる。やはり、キミの手は冷たくて、気持ち良い。その手が僕の体温に馴染むころ、キミはそうっと僕に近付く。ふわり、とキミの吐息を頬で感じる。
「ねぇ、今、抱き締めても良い?」
「勿論。」
優しく抱き寄せられる。キミの身体は、やっぱりキミの手と同じ冷たさに包まれていた。

2、舐める

つるり、と、乾いた唇を舐めるキミ。キミの焦ったときの癖だ。色素の薄い唇に血の色を透かせた舌が踊る様子は、どこか艶めかしくすらある。そんなキミはとても可愛くて、とても愛しい。そのキミの癖を僕しか知らない、というのも、気に入っている。
「ねぇ、利都。君は指が好きだよね。」
どうやら、彼も僕の好みを知っていたらしい。
「うん、そうだけど。」
「それって、誰の指でも?」
「いや、千春のだけだけど。」
「なんで? なんで、利都は僕の指が好きなの?」
いささか訝しげに千春は問う。
「冷たくて、気持ち良いから。」
「ふぅん。そうなんだ。」
安心した様に表情が柔らかくなる千春。ふと思い付いて千春の手をとる。
「ん? どうしたの?」
「ううん、なんでも?」
笑いながらその冷たい手を口に含む。
「うわぁっ! いきなり何なんだよ!?」
「ん? いや、大好きなキミの大好きな手が目の前にあるでしょ。その状況て、結構おいしくない?」
かぁぁ、と、千春の顔が赤くなる。やっぱり、千春は可愛い。

3、掬う

川に手をつけている、千春を見詰める。あぁ、千春の手は冷たいのに、水につけるとさらに冷たくなるのではないだろうか。
「どうしたの? 水、冷たくて気持ち良いよ。こっちに来なよ。」
千春の顔を見て杞憂であったことを知る。はぁ、と溜め息を吐きながら千春のもとへと歩く。僕はやはり、千春に対しては甘いようだ。

4、撫でる

「どうしたの!? その指。火傷でもした?」
千春が驚いて駆け寄って来る。
「そ、火傷。でも大丈夫だよ。大したことにはなってないから。」
心配させまいと笑いながら返す。火傷したのは、右手全体だ。沸騰した湯の入っていた薬缶にうっかり触ってしまった事が原因。幸いなことに僕は左利きだから実害はさして無いのだけれど、いつもどおりに使うと、流石にいたいので包帯を巻いている。
「ほんとに大丈夫? 痛くない? 何かして欲しいこととかないか?」
それでも尚、心配そうな千春をみていたら、良い事を思い付いた。
「じゃ、そこまで心配してくれているんだったら、少し助けてくれないか?」
「へ? いいけど、何したらいいのか?」
不思議そうに僕を見上げる千春。
「手をさ、撫でてくれないかな?」
「何故?」
そんなことを言いつつも、僕の手を軽く撫でる千春。
「千春が撫でてくれると、早く治る気がするから。ほら、千春の手、冷たいし。」
一気に心配そうだった千春の顔が笑い出す。
「なんだよ、それ。」
なんてのは口実で、本当は千春が近くに居てくれると僕が幸せだからだ。嘘で千春の笑顔を見ることが出来るなら、それも悪くない。

5、握る

僕の手の包帯もとれた一週間後の事。
「全快祝い、くれないかな?」
「は? 何故?」
「火傷治ったから。」
「うーん、いいけど、何?」
「手、繋いでもいい権利。」
「へ?」
「どしたの? もしかして、嫌だった? それなら別に良いから。ごめん。」
「いや、そういう意味じゃなくてさ。」
「じゃ、どんな意味だよ?」
「もう、そんな権利、利都にあげたと思ってたよ。」
え…。今、すごく嬉しい事を言われた気がする。
「じゃ、いい。」
「なにが?」
「全快祝い。もう貰ってたんだったら、もういいから。」微笑んで応える。そうか、だったらキミを繋ぎ止める事ができるよな。ふわりと翔んで行ったりしても、捕まえられる。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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指で5題

友人に貰ったお題で語らさせていただきました。どうでしたでしょうか?

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投稿日:2010/03/26 22:07:13

文字数:1,649文字

カテゴリ:その他

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