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はなさき、くちづけを

同じ夢を見る。少女が歌う夢を見る。

歩むは暗闇、向かうは暗闇に浮かぶ色。
鮮やかな柵、奥には白い壁、そして少女が居る。
いつも柵越しの逢瀬、触れる事は出来ない。

長い髪を揺らし、俺の鼻先を漂う少女。
何を話すでもない、見詰め合うでもない。
少女は何も言わない、初めて逢った時に不思議と理解した。

蕾が口元を覆い、耳をも塞いでいる。
俺の声に反応も返事もしないのは、そのせいなのだろうか。
けれど、俺たちに一つだけ、唯一赦された言霊がある。

「歌って」

呟いて、ぼんやりと見ていると、不意に少女は立ち止まり------歌が始まる。
その瞬間、硬い蕾は見事に花咲き開くのだ。
待ちに待った時が来た、その光景を脳裏に焼き付けるために身を乗り出す。

抑えていた何かを取り払うように少女は歌った。
俺の存在に気付かない風に身体を揺らし、空間を漂う。
花に覆われた少女の口から聞こえるのか、全身から溢れるのか。
前者でも後者でも、正直どちらでも良いと思う。
ただこの名も知らぬ少女の、名も知らぬ歌に溺れて溶けてしまいたい。
逃避なのであろう、これが俺の全てであれば幸せなのに。

夢現、決して届かない手を少女に伸ばし続けた。

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投稿日:2008/09/13 00:05:53

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カテゴリ:ピアプロキャラクターズ

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