ジャケット

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月光 ~offvoice~

赤く滲む視界が揺れ ポツリ黒く滴る水
コツリコツリと迫る音に 後悔と絶望がこだまする
なのに なぜだろう?
僕は君に惹かれていたことを
なぜか今更 思い出すんだ

4月1日 
期待と不安で色めきだつ教室の片隅で、君はまっすぐに凛としていた。
誰とも交わらない君の空気は、拗らせた僕と近いものに思えて、自然と目で追ってしまう

5月17日
初夏の日差しを避けるように、君は校庭の隅で深刻そうに手足を拭っている。
錆びた蛇口と水道水が赤く混ざりあい、薄っすらと君の肌をなぞっていく

5月19日
一年の女生徒が家に帰らないと、全校集会で通達があった。
皆、家出や素行の話で盛り上がり、教師は苦虫を嚙み潰したような顔だ

7月14日
月とLEDが競い合うコンビニ前を、厳しい顔の君が一人で歩いていく。
駅とは逆の道だから、塾にでも通った帰りだろうか?

7月15日
事件が起きた。
昨夜、若い女性が公園で通り魔に〇された。君が歩いて行った方向だ。
高まる鼓動で教室に駆けこむと、いつも通りの君が空を眺めていた。

7月29日
珍しく機嫌がいいので尋ねてみると、今日は新月だという。
僕は意味が分からず、あの晩、君を見かけた話をすると、君はぞっとする瞳で「居たんだ」と呟いた。

熱い熱い 君の手で抉られた脇腹が 温もりを通り越して燃えている
君のあの瞳はこういうことだったのか
君は、こんなことを繰り返していたのか。

吐く息が白い 足がもつれて階段を転げ落ちる
蹲り見上げると、階段の上から神々しく見下す君が綺麗だ
君は感情を殺した瞳で告げる。「サヨウナラ」と。

9月4日
上弦の月が眩しい夜は寝苦しくて身体が熱い。

10月10日
夜道を歩いていると、駅の方へ走る君と目が合う。
すれ違うパトカーのサイレンのせいか、紅く染まって見えた。

11月8日
熱っぽさを抱えながら学校に着くと、皆既月食の話題で持ち切りだった。
あの日から君とよく目が合う気がする。
自惚れた気持ちにかぶりを振り、早退して休むことにした。

11月16日
学校に警察が来た。皆既月食の日から3人も行方不明で、一人はうちの生徒らしい。
僕は君を思い出したが、思わず黙ってしまう。
その日から、君は学校に来なくなった。


※文字数制限 続き欲しい方がいればX(@sakura11eleven)まで。

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投稿日:2024/01/29 01:20:46

長さ:05:51

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カテゴリ:カラオケ/インスト

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