太陽の光さえ届かない

真っ暗闇の水底(みなぞこ)

立ち上る硫化水素

それに群がる白い生き物たち

ぼくはそこに沈んだ魚

ここは深海


ここは寒くてなにもない

ここは寒くてなにもない

仕方ないからよくわからないものを食べる



暗闇を青い光がまたたく

顔のおおきな魚がとおる

ここは深海

鯨の骨がよこたわる

僕は沈んだ魚

ここに来たのは望んだのか望んでないのか


ここは暗くて音すらしない

ここは暗くて音すらしない

仕方ないから上をあおぐ

幽霊のような魚がするりと通り過ぎる



彼は言ったよ

ここにいるのもわるくない

彼は言い捨てたよ

ここがいちばん"底"だ、最低だ

もうあらがうことに疲れてしまった

浮かび上がることはもうないだろう

鯨の骨は少しずつ朽ちていく

僕はくじらのほねになりたかった

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くじらのほね

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投稿日:2010/04/16 02:06:04

文字数:372文字

カテゴリ:その他

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