もしも、の話をいたしましょう。
もしも私が死ぬ時は。
誰にも看取られる事など無く、ひとり静かに逝きたいのです。
月の明かりに照らされて
星の声に耳を傾け
夜の薫りを感じながら
しっとりとしたその空気を体いっぱいに吸い込んで
眠るようにゆっくりと、死に堕ちたいと思うのです。
誰も、私のことなど気に懸けなくて良いのです。
私の名など忘れてしまって良いのです。
それでもただ一つだけ、覚えてくれるというのなら。
やがて意味を無くすもの
消えゆくものたちをひたすらに愛した誰かが、
それらに想いを預ける誰かがいたことを、どうか。
愛しいひと。
死に向かう微睡みの中で、私はあなたのことを思い出すでしょう。
それは決して甘い感情ばかりではなく。
あなたを妬ましく思った事
恨んだ事
憎んだ事
沢山ありました。
その感情を一つ一つ
辿る様に偲びたいと思うのです。
あなたは生を学び
死を学び
人を学び
明日に絶望するでしょう。
その両の耳を研ぎ澄ませ
その両の目に焼き付けて
そうして選び、拾ったものだけが
あなたの一部となるのです。
これから生まれる誰かの為に。
これから息絶える誰かの為に。
記憶も感情も遺さず連れてゆきます。
名残をひとつ、この場所に置いてゆきます。
そしてようやく、さようなら。
もう二度と会えないことを願って。
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