暗い夜の森を抜ける一匹の 鼻歌まじりの狼の少女
荒れ果てた道の上 月と太陽踊り行く
小さな手にしっかりと 握られた明日への光
狼少女の吐いた一つの嘘 耳の赤頭巾尻尾のスカート
お伽話の風評被害 言われ無き罪に抗うと
絶滅(ほろび)から逃れるために 今一度人間(ひと)に歩み寄る
心優しい狼少女 仲間のために一匹(ひとり)旅
誰より素直な狼少女 陽と月と、人にご挨拶
月
「狼のお嬢さん 今宵はどちらまで?」
狼少女
「あのなお月様、私(わだす)は都まで」
太陽
「狼のお嬢さん 今朝は何しにお出かけですか?」
狼少女
「あのな、お婆(ばっさ)から預かった大事な手紙…
人間の都まで届けに行ぐ途中」
盗まれた手紙追いかけ走る内 ぴょんと飛び出した狼の耳に
向けられた銃口 絶体絶命狼少女
庇うように進み出た 人こそ真昼の国王
澄んだ声色 優しい眼差しは
陽のよう温かく なんだか好きになる
無くした手紙と信用を 身一つで補えるなら
真心込めて誠心誠意 貴方に仕え生きましょう
誠心誠意真心込めて 信じて貰えるその日まで
人と獣の共存夢見 一人と一匹(ふたり)こっそり笑い合う
狼少女
「食うに困らねぇなら 私(おら)だ人襲わねぇ
あの鉛玉で殺すの止めてけれ」
王
「狼のお嬢さん。それなら我々が
あなたを信じられるその日が来るまでは
どうか私の傍で共に生きてくれ」
貴婦人
「あれが呪いだって?あんな耳の呪いが?
嗚呼!あんな女の何処が良いのですか陛下っ!?」
聖職者
「あれは狼だ!王は何をお考えか!
獣を娶るなど、正に悪魔の所行だ!」
(おかしいおかしい何かがおかしい)
(変だわ変だわ何かが変だわ)
貴族
「今に見ていろ!この手紙があれば!
いや、待て。楽しみはゆっくりと……」
明るい時間は 飛ぶように流れて消える
悪意の苗床は 綺麗な花赤く咲かせる
狼少女
「解り合える日が来ても、貴方の傍にいていいですか?」
王
「君は我々人間の誰よりも美しい心の人」
民A
「奥方様が来てから王は何かがおかしい」
民B
「奥方様には妙な耳があるらしいって噂」
兵A
「奥方様が来てから王は何かがおかしい」
兵B
「奥方様にゃ妙な尻尾があるという噂」
幾年過ぎた頃に見つかるは 書き換えられた秘密の手紙
“人に溶け込み人を襲え喰え 愛されながら葬るが良い”
人を食わない狼が怖い 文字と言葉を自在操る
人に似て人に在らざる者よ 嗚呼恐ろしや唯恐ろしや
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