暗い雨の夜道。傘を差して帰る。

今朝からずっと雨だ。

一台の乗用車が、すれ違いざまに路肩の水を跳ね上げ、
私の半身に濁った水をひっかけた。

「おい…」

振り返るも、車は知らん顔で走り去る。

ナンバーはxxxx、色は…白。

「…」



〓〓〓〓〓〓※憤りに任せて脳内演習を開始〓〓〓〓〓〓


傘を畳んで脇に捨て、車を追って走る。

背負っていたカバンを胸前に移し、
カバンの中のxxxxxxxxを左手で掴み、
右手にxxを数発握る。

口を開いたカバンが揺れ、
ガシャガシャとうるさい音を立てる。

雨で濡れて滑る指先でxxをセットし、
目は遠くなる車をひたすら追う。

「逃がすか」

ペースを上げる。

と、車は信号で停止。

…よし。

左右をさっと振り返る。

誰も近くにいない。

目測10mほどの距離で片膝をつく。

雨で滑るxxxxを握りしめ、右手でxxxを引き絞る。

ナンバーと車種、そして色。

…間違いない。

信号が変わり、走り出す車。

加速を見越し、狙いはナンバープレート左上。

息を吐き、右手の指を緩める。

指先をすり抜けるxx、その中の硬いx、
雨粒を貫き抜ける小さな点。

風でかすかにカーブを描いて、
ナンバープレートのあたりに…。

ザー

音が戻ってくる。

雨の音。

当たった音はしなかった。

…当たったか?

車は停まることもなく、
カーブを曲がって見えなくなった。

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓※演習完了〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



…終わってみれば、

当たらなかったことへの空しさと、安堵。

そして、かすかな怒りの残滓。


目の前には、雨の降る暗い帰り道。

仕事に疲れた大人たちが、
家路を急いで、私を追い抜く。

ハンカチを取り出し、泥をぬぐい、
ニヤリと意味なく笑ってみる。


不思議と気分が軽くなった。


「さぁ、さっさと帰って、飯食うぞ!」

現実は、そんなことをやってられるほど、ヒマじゃない。

●終わり●

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ある雨の夜

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投稿日:2010/11/03 16:12:27

文字数:848文字

カテゴリ:その他

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