いちごタルトをもう一度
1
いつか ふたりで 行った
街の はずれの 洋菓子屋さん
今でも 変わらず ありました
古いセンスの ショーウィンドウが
なお懐かしい
そうね あれは私の お給料日
選んだ たった二つだけの タルト
キミは手を合わせて 笑いながら
「次はボクがおごるから」と言った
甘い いちごタルトをもう一度
そんな 夢の続きを見たかった
だけど いちごタルトはそれっきり
ささやかな願いは キミの競馬に消えた
2
キミは無精ヒゲ 伸ばして
時々出かけた アイドル握手会
ふらふら 就職しないまま
「まだ若いさ」と ロン毛かきわけ
言い訳したね
都合悪くなると はぐらかして
素敵な未来の話をするの
そして手を合わせて 「ごめんなさい」
それじゃ続かないと知っていたの
甘い いちごタルトをもう一度
そんな 夢に釣られて 買ってみた
白い ボール紙の箱の中は
もう行方知れずの 恋のアリバイみたい
◇
一人の部屋に 流れてたアニメでは
好きになった女の娘の数だけ
男の子が分身 皆ハッピー
唖然の「あ」の字でタルトは落ちる
落ちた いちごタルトをもう一度
拾って ぼんやり見てるエンディング
もしも あの日おごられたとしても
キミが支払うのは 私の貸したお金
甘い いちごタルトをもう一度
そんな 夢の続きを見たかった
どこか 遠い空の下でキミは
今日も笑いながら きっと手を合わせてる
私だけのメモリイ この場でもう一度
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