目覚めた時、
少しだけ開いていた窓を見上げると、
桜が舞っていた。

「今日も居るかな?」

いつもより軽い体を起こし、
窓へと近寄る。





数える程しか言葉を交わした事は無い、
優しい笑顔のアノ子。
線の柔らかい顔ではにかむ姿に、
酷く惹かれた。

美しく
儚く
愛しい、アノ子。





僕がアノ子を見つけた時、
彼女は顔を歪ませ、
泣いていた。

その涙が止まるまで、
強く、強く、
抱き締めたいと手を伸ばし、
やっと自分の異常に気付いた。



嗚呼、僕はもう。



それならば、
例えこの身が砕けようと、
燃え尽きる瞬間まで見届けていて?





四月の柔らかい風が吹いていたあの日。

君が初めて僕を見つけてくれた時。

僕は君に恋をした。





今思えば、
君ともっと話をしておけば良かった。
君をもっと笑わせてあげれば良かった。


君に、想いを伝えれば良かった。


今、君の隣で僕が叫んだとしても、
もう君には届かない。


抱き締めても、抱き締めても、
僕の手に君を収めたくても、
もう、叶わないんだ。

だからせめて、今だけは
泣いている君の傍に居させて?






もう僕には、何も無い。


君を抱き締める手も
叫ぶ声も
涙すら、流す事が出来ない。




それでも

君を想う気持ちだけは遺ってる。

だからこそ

“死ニタクナイ”





















最期に、君を抱き締めたい。

僕の亡骸を前に泣き崩れる君を

強く、強く。



もう何も望まないから、

僕が居た事を

君だけは憶えていてくれますか…?





ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

- Ash -

歌詞『Ash』の小説みたいなもの。

閲覧数:130

投稿日:2012/06/04 14:33:39

文字数:696文字

カテゴリ:その他

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