詩「太陽に、かざして」


            1

 裸足で蹴ったあの日、
 真夏の太陽を 誇らしげに食べて
 君はまた成長したんだね。

 そう言えば、甲子園もインハイも
 秋季大会も終わったし、もうすでに秋風が南風と
 衝突しているんだ ほら
 空に浮かんだ秋の雲が流れていくよ

 (体育祭はどうだった?文化祭はまだだよね?そう、中間テストの結果は
 どうしてた?まさか赤点なんてとってないだろうね?)


 夕闇に赤とんぼ、
 が、
 沢山舞って
 君はまだ「そこ」に踏みとどまっていたよね。

  (そう言えばもう赤とんぼ、見えなくなったね。
  今年は酷いくらい暑い夏   
  だったから、トンボも沢山飛んでいた気がする。まだ気温が高いんだ)

 陽炎のように ゆらゆら揺れている
 まるで 淋しく
 感じるのは、君のせい、ではないんだ。

 真夏の後悔は、
 そのまま、そっとしておこうと決めていたのに、
 あの一球ですべてが終わった、なんて
 言わないでほしかった・・・

     そうだよ そうなんだよ
      いつものように
         
         夏
         は
         走
         馬
         灯
          
        みたいに回ってめくりめく。       
        どうか、過ぎ去らないように。お願い。
           (あの時
           (真夏のお寺の境内に
           (灯した燈篭の灯りが
           (いつまでも
           (揺れていたのです   
    
       君の影は シャドーピッチングだったんだ。


           2
  
 僕は信じているよ いつまでも
 たとえ誰も見ていなくても・・・
 日陰に咲いた、俯き加減の向日葵は、
 萎れないように、そっと頭を撫ぜて、
 支えてあげたいんだ。
 
 もしかしたら、君は家に帰っても
 明るく振舞って、みんなに迷惑
 かけないようにと気づかないうち
 気遣っている そして
 床についた途端、すぐさま眠りへと
 誘(いざな)われてた。

   明日、練習があるんだ
   そうなんだよ まだまだ続いてる
   今を生きているその向こう側にも

        虹
        が
        か
        っ
        て       
        
   いるんだ。きっと 晴れの日は続いてく。
   僕も信じてみるよ・・・ だから君も信じて・・・  
      

 だからこそ
 メールも、声も、いらなくて
 君が元気でいるように、つよく願っているよ。
 
 風が冷たくなる前に
 願った、日陰に、
       寄り添う向日葵は
        ”mousugu”
       弱くなる太陽に顔をあげて
       まだ諦めねぇ、
          諦めねぇ、
           諦めねぇ!
              と、大きく、君は大声で叫んでた!

 その声は、グラウンドを超えて 大きくこだましていた。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

「太陽に、かざして」

詩の背景は、高校球児の世界を描いています。もう秋季大会も終わり、来年のセンバツまで彼らの闘いはお預けです。けれど、本当はこれからの季節が一番大事で、冬をいかに鍛えていくのかに、かかっているのです・・・
今作は地方大会で敗退した一介の球児の姿を、幻影として描いてみました。真夏の灼熱太陽の下、踏ん張ってきた球児たちの姿にエールを・・・

閲覧数:51

投稿日:2010/11/13 23:30:28

文字数:1,363文字

カテゴリ:その他

クリップボードにコピーしました