―――― ある国に女のように美しい王子がいました。
その傍らには、黒髪の女と金髪の女。
黒髪の女は、エミリー。
金髪の女は、マリア。
その二人は王子の愛人と言われるものになるわけで。
二人は気付かない。知らない。
王子の最愛の人を。
―――ある夜の二人の部屋。
マリアは、化粧をしている最中。
エミリーは、目をつぶり、寝ようとしている。
「ああ、今日は最高な日だわ… アレン様に御呼ばれするなんて…」
恍惚のような表情を浮かべ笑う。
「…ばかな子ね? 王子はあんたなんか相手にしてないわよ?」
意地の悪い笑みを浮かべるエミリー。
「あら、エミリーお姉さま。嫉妬ですか? 醜いですわよ?」
睨みつけるマリア。
「嫉妬? 勘違いしないでちょうだい? アレン様が求めてくれるのは、私なんですわよ?」
ベッドから体を起こし、髪の毛をかきあげる。
「では、なぜ今日、エミリーお姉さまは呼ばれなかったのかしらね?」
憐みの視線を投げかけるマリア。
「それは… 絵本読みはマリアの役目なんじゃないかしら?」
笑いながら言うエミリー。
「え、絵本読みですって!!??」
化粧を中断し、エミリーを睨みつける。
「あら、そうじゃない? 私、演劇の経験はないの。 あんたみたいに、働いたこともないの。」
首をかしげ、ベッドに戻ろうとするエミリー。
「ああ、そうっ!!!! 私はもう行きますっ!!!」
憤慨し、部屋を出ていったマリア。
――――ピキリ…
何が起こったのか。
それは、ベッドサイドのアクセサリーが折れた音だった。
ベッドの寿命だったのか? いや、違う。
エミリーの力で折ったのだ。
「あんな子がなんで御呼ばれするのよ… あたしのほうがっ!!! もっとっ!!!!」
クッションの羽が飛び散る。
「いやああああああああ… 」
その夜、エミリーが嫉妬の炎で狂ったのは言うまでもない。
――――――
ああ、女というものは哀れで物悲しい。
女は哀れ、哀れ。
一人の男にそんなにも執着できるのだから。
そんな人を僕はうらやましく思う。
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