男「38.5……。結構な熱だな。仕事は休むか……」
女「分かった。じゃあ連絡しておくね」
男「あぁ、頼む……って何で当たり前のようにお前がいるんだよ」
女「内縁の妻ですから」
男「出てけ」
女「私に風邪を移さないように気遣ってくれてるんだね」
男「お前のポジティブさを見習いたいものだ」
女「えっへん」
男「褒めてねぇよ。というか、お前も仕事行けよ」
女「……イタタタ。急に頭痛が」
男「帰って寝ろ」
女「ウソウソ!! 超元気だよ!!」
男「じゃあ仕事行け」
女「むむむ……何でそんな意地悪するのさ」
男「風邪だからお前に付き合うのがしんどいんだよ」
女「そうだ、おじや食べさせてあげる」
男「……食べたらお前帰ってくれるのか?」
女「それはその時に考えよう」
男「何だか熱が上がってきた気がする」
女「えぇ、もう……安静にしてなきゃダメだよ」
男「お前が言うかお前が」
女「じゃあおじや作って来るね」
男「作ったら行けよ」
バタン。
男「……サンキューな」
ガチャ。
女「お、男君にお礼言われちゃった!! も、もう一回!!」
男「……ッ!! 盗み聞きしてんじゃねーよ!! 早く行けって」
女「ちっ」
ガチャ。
女「おまたせ」
男「そこに置いといてくれれば自分で食べるから、お前は早く行けよ?」
女「……それだけ?」
男「ん……あぁ、作ってくれてありがとう。助かった」
女「そうじゃなくて。ほら『女が食べさせてくれないと、俺死んじゃう』とかないの?」
男「あると思うか?」
女「熱で意識が朦朧としている今ならもしかして」
男「意識ははっきりしてるから大丈夫だ」
女「私、男君が心配で心配でたまらないの!!」
男「社会人としての自覚を持て」
女「じゃあ、一口!! 一口だけ食べさせて!」
男「……しょうがないな」
女「ホント!? やったー!! じゃあ、いくよ?」
男「何でお前が食うんだよ」
女「ん、だって口移しじゃ?」
男「普通に食わせろ」
女「そんな照れなくてもいいのに」
男「照れてるように見えるか?」
女「顔が赤いよ」
男「熱のせいだな」
女「私にお熱……。う、ウソウソ!! ほら、口あけて? あーん」
女「どうかな?」
男「……うまいよ」
女「えへへ、良かった……。じゃあ約束だし、私いくね?」
男「……女」
女「ん、なぁに?」
男「やっぱり、食べさせてくれないか」
女「!! もー、男君には私がいなきゃダメなんだから!!」
男「うるさい」
女「えへへ、今は何を言われても嬉しいのだ!! はい、あーん」
女「男君、可愛い//」
男「うるせえ……」
女「……はい。これで最後だよ」
女「全部食べれたね。食欲はあるみたいだね」
男「ごちそうさま……」
女「美味しかった?」
男「……」
女「男君? 寝ちゃったか」
女「額冷やさないと」
女「うわ、すぐ温くなっちゃう。こまめに代えないと」
女「毛布ちゃんとかけないとダメだよ」
*
男「ん……寝ちまったのか。14時か、熟睡しちまったな」
男「ん、何か横にある」
女「すーすー」
男「寝てる……。こいつ結局行かなかったのか」
男「まだタオルが冷たい。ずっと看病してくれてたのか」
男「……ありがとな」
女「えへへ……むにゅむにゅ」
男「どんな夢見てるんだか」
女「……男君の風邪。えへへ。移れば看病してもらえる……」
男「聞かなかったことにしよう」
Fin
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