待合室と静寂の鐘

notemn0529

夕暮れ待合室
冷めた風が吹き抜ける
硝子を撫でる指先
微かに振れた瞳
誰かの声どこ吹く風
哀れ瞼を伏せるのみ
白日の下嗤う者
誰の揺り籠なのか
町はただ鳴くばかり

重ねた指を見つめ
喧騒に身を委ねる
その鐘はただ響くばかり
ただ鐘は鳴るばかり
静かに手を合わせる

夕立バス停の影
小さく呼吸をする
子猫に触れる指先
僅かなその温もり
凪は潮風と消え去り
錆びた鉄の塊
漂うあの日の面影
微睡みのあの夜に
子猫は夢を見ない。

静かに手を合わせる
伏せる瞳その呂色
白銅の檻血の匂い
浸食に身を委ねる

重ねた指を見つめ
炎症に身を委ねる
その鐘はただ響くばかり
鐘はただ鳴るばかり
静かに手を合わせる