境内に猫ひとり 簡単に猫被り
悪人でもピースは出来る
境内に猫ひとり 痘痕も靨になり
結局自分が一番可愛いって ヒトはみんな知ってるんだ

境内に猫ひとり 想像には難くない
善人でも舌打ち出来る
境内に猫ひとり 同じ穴の狢になり
結局自分が一番不幸って ヒトはみんな勘違い

初詣のおみくじの結果なんてきっと誰も
覚えてなんかいないんだろな

何気ない一言で 人を困らせては
今日もまた知らず知らずのうちに神頼み
そして水で清めて 銭を投げ捨てては
痣癒すように 赦し請うように また泣き笑い

境内に猫ひとり 沢山の人がいるもんだ
「人でなし」と呼ばれるのはいつもヒト
境内に猫ひとり 爪の垢を煎じて飲み
それで憧れの人になれるならお安い御用じゃないか

初詣に投げた賽銭の金額なんてきっと誰も
覚えてなんかいないんだろうな

腹立たしい言動に いちいち苛立っては
明日もまた知らず知らずのうちに迷惑人
その汚れた掌を 深く擦り付けては
胸撫で下ろすように 跪くように またひとつ祈り

他人の失敗談を笑える程の失敗作な人間どもが
集っては 祈っては 謳っては
そうまたお詞を重ねる

心無い揚げ足取りに 酷く傷を負っては
今日もまた知らず知らずのうちに恋い焦がれ
参道の端に寄って歩き またも鳥居にお辞儀を
息絶えるように 生き返るように また人は鳴く

境内に猫ふたり 漸く生まれ変わり
動物でも恋はするものさ