
何とも無く移り征くあなたを
忘れて仕舞うのが
酷く恐ろしく成って
思い出許りに縋った
景色も聲も遣る瀬無さも何も
憶えていないでしょう
彼の日、訥々と教えてくれた
痛みが今もあなたの中に在りますように
あなたが軈て忘れ去るような
愛しさが私の総てでした
其の瞳に寫る季節はただ
過ぎ征く許りでしょうか
痛みと呼ぶには儚いような
砂礫に埋む透明な感情
不確かな言葉を掬っては
音無しく消えて仕舞うのだ
此処で何度、綴る宛の無い書簡
今も繰り返す悲哀に満ちた言葉だけの散文が
空回って舞って継いで接いで残らない儘
つつ闇に消ゆ月に手を伸ばした
叫びのような弱々しい詩を
忘れて仕舞うのか
あなたは大きく成って
輝き許りを歌った
気付けば世界は私をひとつも
憶えていないでしょう
独りに成って仕舞った
其れすらも、正しいと思うのでしょう
小さい痛みを負った区々の
囂しき与太話
其れは誰が為の感情か
教えてくれ、喜劇のように
然ても気忙しく霞む未来に
縋る此の心すら愛でした
ひとつ、大切な物があなたには
幾つも有るのでしょうか
痛みも悲しみも無い世界の
幸福はどんな名前でしょうか
此処に在った総てが消え征く
触れる事も無い儘
あなたが軈て忘れ去るような
私の瞳に焼き付く日々が
離れなくて痛いわ
何時迄も大切な感情でした
夙に潰えた憧れは屹度
喧騒の中に寄る辺を追って
不確かな言葉で綴っては
音無しく泣き叫ぶのだ
あなたを次第に見失って
離れ離れの約束は彼の日に蟠って
徒に過ぎて征く
私が此処で彷徨った儘
あなたを軈て忘れ去るような
幾星霜を何で満たそうか
痛みは確と棲み着いた儘
どうか、どうか、思い出さないように
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