贄の人々
―これは 遥か遠い昔の 悲しき娘達の お話―
生まれた時から大切に 育てられまるでお姫様
だけれどもそれは少女が 十六までの事
“神に選ばれし者” そう崇められたけれど
それは聞こえの良い死刑囚
古(いにしえ)より続く負の連鎖 生まれし時から定められて
周囲の優しさ受け入れず ただ救いを待ち続ける少女
十年ほど過ぎたとある日 現れた村の男の子
少女に手を差し出しこう言った
「一緒に逃げよう」と
けれども少女は彼の 手を打ち払いこう言った
「貴方は何もわかっていない」
同情しかできない村人 その虚しさ痛いほどわかる
少女は決意を固めていた 自ら呪縛に身を委ねようと
「悲しい」 「辛い」 「苦しい」 「痛い」
そんな言葉ばかり吐き出して
けれど一番伝えたい言葉
少女はまだ誰にも言えずに……
やがてその時がやってきた 旅立ちを見守る人々に
彼女は微笑みこう言った
「今まで本当にありがとう」