佳紗さん

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yzmp1879

生粋のKAITO廃&カイメイ廃です!!

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イチオシ作品

スミレノ丘にて

―これは少し昔の不思議なものがたり― ************************* 「…ト…イト…」 遠くから聞こえてくる霞んだ声は、初めて聞いた筈なのにどこか聞きなれた声のような気がした。 「カイト」 目を開くと白髪の老人がこちらをみつめている。 「おはよう、カイト」 その姿も、声も、見たことも聞いたこともないのに彼が僕の何であるかが不思議とわかった。 彼がさっきから呼んでいるその名前が僕のものであることも。 「おはようございます、マスター」 …僕が作られたものであることも。 僕は歌うためのからくりで、毎日のようにマスターのために歌った。 アカペラのときもあったし、時にはマスターやマスターの息子夫婦の演奏に合わせて歌ったりもした。 毎日が楽しくて、こんな日常がずっと続くと思っていた。 そう信じていたのに… マスターが帰らぬ人となった。 原因は心不全だと誰かが言っていた気がする。 マスターがもう動かないだなんて信じられなかった。 …お通夜には沢山の人が訪れた。 マスターはここらで有名なエンジニアだったらしい。 人々は口々に別れの言葉を告げていく。 少し離れた所でそれを眺めながら僕自身も確実に失ったなにかを感じていた。 ************************ マスターのものだった家の薄暗い廊下をあてを失ったかの様にふらふらとあるきつつ、 僕はこれからもこの家に仕えるのだろうか、もしそうだとして僕はいままでと同じように歌を歌うことができるだろうかと考えていた。 気がつけば斜め前のドアが少し開いていて中の明かりが線のようになって廊下にこぼれている。 中では息子夫婦が会話しているらしく、話し声が明かりとともに漏れていた。 ドアを閉めようと取っ手に手を掛けたとき、聞こえてきた会話の内容は信じられないものだった。 「ねえ、あなた。あのからくり、これからどうするの?」 「カイトのことか。うちに置いておけばいいんじゃないか?父さんの遺言にもそう書いてあったろう」 「置いといても邪魔なだけじゃない、サーカスとかに売っ払っちゃいましょうよ」 「でも…」 「いいじゃない。死人の遺言なんて形だけよ。今は私たちの物なんだから」 「ばちあたりじゃないか」 「迷信よそんなもの。それにあなたはいま開発資金がほしいんでしょ?あのからくりは高く売れるわ」 「そう…だな。そうするか」 ………!? 僕はサーカスに売られてしまうのか。 もう今の話題にはかたがついたのか、別の話題に移った息子夫婦の会話など耳に入らず僕はただドアの前で呆然としていた。 たしかに僕は歌うのが好きだ。だけど… 見せものになんかなりたくない!! 僕はただ好きな人のそばで歌っていたいんだ。 売られるなんていやだ!! いやだいやだいやだいやだいやだ… 考える前に僕はもう体が動いていた。 作られてからずっと住んでいた家をとびだし、できるだけここを離れる事だけを考えてひたすらに走った。 空に浮かぶ月は初めてそれをみたときとよく似ている気がした。 ************************* きがつけば東の空はもう明るい色に染まっていた。 あたりを見回せば全く知らない所で、自分の家からどのくらいはなれているのかすらわからなかった。 あれから一年。 誰かが僕のことを探しているといううわさを聞くこともなく、僕の旅は居場所探しが目的となっていた。 そして、ある日あのスミレの咲き誇る丘にたどり着いた。 僕がつけている襟巻の留め具のデザインはスミレという花がモチーフなのだと昔マスターが言っていたのを覚えていたが、実物を見るのは初めてだった。 なんて綺麗なんだろう。 自然と歌がこぼれて夢中になっていたところで後ろから声がかかった。 「あなたって歌が上手なのね」 「!?」 いつからそこにいたのだろう。慌てて振り返るとそこには、 茶髪のショートヘアの女性が立っていた。 いや、女性といってもまだ17、8くらいだろうか。 髪と同じ色の綺麗な瞳をこちらにむけて微笑んでいた。 「い…いつからそこに!?」 「いつからって…ついさっきだけど?」 「そ…そう…」 「見慣れない顔ね。旅人さん?」 「まあ…僕はからくりだけどね」 「ええっ!?からくりなの!?」 彼女は興味しんしんといった顔でこちらを見ていたが、急に僕の胸に飛び込んできた。 「わっ!?」 「すごぉい…ほんとにからくりだ…」 そういうと僕を見上げて満面の笑みを向けた。 あれ…なんだろう、すごく顔が熱いような。 なんでだろう。 そんなことを考えているうちに彼女は僕の胸から離れてこう言った。 「わたしはメイコっていうの。あなたは?」 「カイトだよ」 「カイトはルイさんの所で作られたの?」 「ルイ?」 「あれ、ちがうの?ルイさんはこの村のエンジニアだよ」 「へぇ…僕はすごく遠くで作られたんだ」 「じゃあカイトはどうしてこの『スミレノ丘』まできたの?」 「ここ、スミレノ丘っていうんだ?僕はちょっといろいろあって…」 と、いままでのいきさつを彼女に話した。 そのたび「ひどい!!」とか「いいなぁ」と返してくれて、きがつけば雑談に入っていた。 こんなに話すのが楽しいと感じたのはいつぶりだったろうか。 「あのさ、」 「なぁに?」 「君のことめーちゃんってよんでいい?」 「うん!」 こんな話でさえ楽しかった。 いつしか日が暮れ、彼女がこういった。 「あのさ、カイト」 「?」 「カイトは帰る場所ないんでしょ?だったらうち来ないかなぁ、なんて」 「え、でも親御さんは」 「わたし一人暮らしだから大丈夫。そのかわり歌を教えてよ」 …こうして僕は彼女と暮らすようになった。 彼女といると すごく楽しかった。マスターが生きていた時みたいに。いいや、それ以上かもしれない。 彼女は僕にここの民謡を教えてくれたり、僕にギターを買ってくれたりした。 あれから数年たって、これからもずっとこうでいられると思っていたのに 戦争が始まった。 戦火はスミレノ丘まで広がって、僕たちは避難をよぎなくされた。 「めーちゃん!!絶対手を離さないで!!」 「うん!!」 混乱の渦の中、人ごみの中で僕らははぐれないよう手をつないでいた。 やがて東西に伸びる分かれ道に突き当たり、人ごみは二手に分かれた。 つないだ手が緩くなりかけ、握りなおそうと思ったそのときだった。 左側…めーちゃんのいる方から衝撃を感じ、手を放してしまった。 どうやら人が割り込んできたらしい。 「めーちゃん!!!」 「カイト!!!」 僕は東へ、めーちゃんは西へと伸びる道に人と一緒に流されていく。 「っつ!!」 その流れに抗えぬまま、僕らは離れ離れになった。 何日経っただろうか。 一週間とは経っていないはずだ だけど僕には幾千の時が経ったように思える。 「兄ちゃん」 「はい?」 隣の男性が話しかけてきた。いささか嬉しそうに見える。 「どうかされたんですか」 「どうもこうも敵の軍が西へと進んだらしいぜ。おれたちゃぁ運がいいな!!」 ガハハ、と笑う男性の声が霞んで聞こえる。 敵軍が…西に? 西はめーちゃんのいる場所じゃないか。 がたん、と僕の座っていた椅子が音を立てる。 僕はそのまま外へと向かう。 「兄ちゃん、どこ行くつもりだ!?」 「西へ」 やめろ、という制止の声も聞かず、僕は外へと飛び出した。 西側に到着した時にはもう敵軍が引いていた。 動かぬ人たち。 焼けた大地。 焦げたにおい。 生き物のいる気配などどこにもなかった。 めーちゃんは 眠っていた。でももう目を開けてはくれなかった。 いくらゆさぶっても いくら呼んでも 泣き叫んでも 帰っては来なかった。 「…めーちゃんっ…」 めーちゃんを背負って帰ってきた僕らの暮らしたスミレノ丘は 幾千の夜の戦火に燃やされ、灰色の亡骸になっていた。 土まで焼けているのがわかる。 この丘にスミレがが咲くことはきっともう、ない。 彼女のためにこの丘に墓標を作り、亡骸を埋めた。 僕は歌おう。君が教えてくれた歌を。 君がくれたギターを片手に。 この身が止まろうとも。 僕は歌い続けた。 雨の日も、風の日も。 君が喜んでくれるのなら。 時が過ぎ、 墓標は崩れかけ、 ギターは色あせて 僕の指はすりきれて鈍く銀に輝いている。 最近人がここに戻ってきた。 その人たちに僕は君が教えてくれた歌をおしえた。 君の好きだった歌がついえてしまわぬようにと。 人々は村を作り、かつて楽しかったあのころに似た風景に戻った。 一つ違うとすればこのスミレノ丘にスミレが咲いていないことだろうか。 ギシギシと僕の中の歯車が音を立てて回る。 こんな音がするのは異常なんだと解っている。 だけど僕は最後まで君のそばで歌っていたい。 ふ、と視界が霞む。 ああ、僕はもう限界なのか。 眠るのであれば君のそばがいい。 動かなくなり始めた体をひきずって君の墓標にもたれかかる。 このまま眠れば君のいるところに行けるだろうか。 神様 もしいるのならどうか最後に。             ―君と僕の好きだった景色をもういちど― ************************ 次の日、村の人たちはくずれかけた墓標に寄り添って動かなくなった歌を歌うからくりをみつけました。 そして動かなくなった彼を憐み、彼が愛した人の隣に埋葬しました。 その年、不思議なことが起こりました。 かつてスミレの咲いた季節に彼らの墓標の周りにスミレが咲いたのです。 そのスミレは徐々に咲く範囲を広げ、 かつてのように丘一面にスミレが咲くようになりました。 村の人々はこれは彼の思いが形になったものだと口々に言い、 その物語は伝説となって語り継がれるようになりました。 ************************* スミレノ丘に無邪気にひびく子供の声。 見たところ9、10才位の少年と少女が走り回っている。 「カイトおっそーいっ!!」 「め…めーちゃん待って…」 めーちゃんと呼ばれた茶髪の少女は二つの墓標の前で止まり、 カイトとよんだ蒼髪の少年を振り返った。 「ったく…情けないわねー」 足元で息を切らしている少年を見やりながら少女ははきすてた。 「しょうがないからわたしがお話してあげる!」 「ええ!?めーちゃんの話はいつも怖いのばっかりだもん」 「なんか言った?」 「なんでもありません」 「今日のお話はとってもすてきな話なんだから!!このスミレノ丘にある伝説の話だよ」 「この?」 「うん。ええっとね、むかーしむかし…」                       ―これは少し昔の不思議なものがたり―

はじめまして!!佳紗(けいさ)です!!文章が拙いのですが、よかったらみてやってください(笑)
投稿日時 : 2013/08/22 16:09

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