我が家にやってきた、小さい可愛い種KAITO。
誕生数時間で大問題勃発。

「ますたーはぁ、かいとの! おおきいの、じゃまですー!」
「こっ……それはこっちの台詞です!」
うわぁ。どうしようかなこの騒ぎ。
「とりあえずもうちょい声落とそうかー。夜遅いんだからご近所迷惑だよー」
「だってマスター!」
「ごめんなさいです……」
言い募るカイトを遮るように、しゅんとして種KAITOが謝る。……ちびっこに負けてますよ、兄さん。
しかし困った。『種から生まれるとはいえKAITOには違いない』、と数時間前に考えたフレーズが脳内でリフレイン。まさかこんな展開になろうとは。
そもそも騒ぎの始まりは、今日はもう寝ようか、となったときだった。



名前問題は保留にして、今日はとりあえず寝ることにした。
「寝床作らないとねー。布団代わりはハンドタオルでいいかな。手頃なサイズの籠とかあるといいんだけど」
前もって準備することも考えたが、種KAITOのサイズは個体差が大きいようだったので断念していた。ちゃんとしたものは明日にでも用意するとして、今日のところは間に合わせで許してもらおう。
「さっきのアイスカップでいいんじゃないですか? 水洗いですけどベタつきもしませんし、一晩くらいなら虫が涌くこともないでしょう」
「あぁ、それはいいかも! アイスの残り香でいい夢見られそうだしね~」
種KAITOのことは気に食わなくても、フォローはちゃんとくれるあたりが兄さんだ。ありがとう、と笑えば、ふくれっ面もどこへやら。あぁもう、可愛いなぁ。
と、ほのぼのしたまでは良かったんだが。

「ますたー」
「ん? 待ってね、今ベッド作るからねー」
「かいとねぇ、ますたーとねるですー」
爆 弾 投 下。

「駄目です!」
私より先にカイトが即答。ちびっこ相手に全力だよ、このひと。
「おおきいのにはぁ、いってないですー」
「駄目ですっ! 駄目ですからね、マスター!」
「うん落ち着こうか兄さん」
鬼気迫る形相のカイトを宥めつつ、どうしたものか考える。この種KAITO、意外と気性が難しい? というか……黒系ですか?
「えぇとね、マスターと一緒は危ないから止めとこうね。潰しちゃったら困るからね」
「やー! ますたーとねるですー」
言い訳ではなく真剣に危険だと思うのだが、幼児に理屈は通じないのか。どう言おう、と考える横でカイトがエキサイトし、種KAITOも負けじと引かず。
――で、冒頭に至る。



「マスター? 騙されたら駄目ですよ? コイツ可愛子ぶってるだけです」
「ますたぁー、おおきいのが いじめるですー」
「……小さいだけで許されると思わないでね? 僕のマスターに近付く奴は容赦しないよ……?」
あぁヤンデレスイッチ入ってる。種KAITOもアレだし、何ですかこの暗黒空間。
「ちいさくても、まけないですー!」
強気顔でちびっこがカイトを睨む。状況が違えば微笑ましい姿なんだけど……!?
「えいっ! ですー!」
「痛!?」「ぇえ?!」
何それ!?
今、種KAITO……髪に乗ってる粒、投 げ た よ?
「な、何かパチってしたんですけど!」
「外せるんだ、それ! 飾りじゃなくて武器?!」
衝撃の事実だよ。元がポップ□ックキャンディなその粒は、どうも投げつけると弾けるようだ。
「大丈夫、カイト? どこ当たった?」
「いや、流石に小さすぎて場所までは……平気です、静電気くらいの感じだったから」
「あれ結構な電流だって言わない? 精密機器の大敵なんじゃ」
ん? 今のは別に電気でパチパチするわけではないのか。なら平気かな?
見上げたカイトはいつも通り、……いや。何かご機嫌? いつの間にかヤンデレモードは鳴りを潜めて、すっかりにこにこしている。何でだ。いや助かるけど。兄さんのツボって時々わからない。

それはともかく。
「こら、えーと……かいと。乱暴はいけないことだよ?」
うーん、名前が未定だと締まらない。仮に本人の一人称から引っ張ってはみたけど、なぁ。
「ぅー、……ごめんなさい、です……」
謝りはするものの、種KAITOは不満気だ。俯いてしまった。
「カイトも悪いけどね。ちびっこ脅しちゃ駄目です」
「……ごめんなさい……」
横目で促すとカイトも謝る。こちらも不服そうだが、とにかくこれで喧嘩両成敗。
「よし。ふたりとも、ちゃんとごめんなさいできて良い子です。だから、ご褒美」

アイスカップにハンドタオルを詰めて、掛け布団代わりにもう一枚。そんな即席ベッドを枕元に、ベッド(こちらは人間サイズ、私のだ)に入る。隣――といっても高低差が付くが――には、床に敷いた布団。
「マスターの部屋……マスターと一緒……マスターと……」
「普通に寝るだけだからね兄さん。くれぐれも自重するように。起きたら鼻血の海とか勘弁」
事を収める妥協案。全員私の部屋で寝ることにしてみた。
「さ、それじゃ……おやすみ。名前もできるだけ早く決めるからね」
枕元のちびっこに呼びかけようとして詰まり、苦笑する。やっぱり名前は大事だ、早く決めよう。
「おやすみなさい、ですー」
「おやすみなさい、マスター」
「うん。おやすみ、ふたりとも」


 ・
 ・
 ・

蛇足ながら。翌日は悲鳴と共に始まった。
「きゃー!? だから入ってきちゃ駄目だって! なんでこっちで寝てるかなっ」
「マスターのベッドに侵入……僕だって我慢したのに……」
「さらっと何言ってんのカイト。あぁもう、ホントに危ないから止めてー!」
「……ふみゅぅ……?」
眠たげに目をこする種KAITOは、アイスカップの即席ベッドではなく私のベッドに潜り込んでいる。心臓に悪すぎるから真剣に止めていただきたい……!
「ふぁ……ますたー。おはよぉございます、ですー」
もぞもぞ起き上がって良い子のご挨拶。寝起きのとろんとした笑顔は蕩かされそうに愛らしい、けど。
「今日中にちびっこベッド作ろう」
「全力でお手伝いします」
寝るときだけは隔離しないと洒落にならない。可愛い子には弱いけど、なればこそ! 安全確保のためには心を鬼にも致します!

決意と共に本日の予定を決定した私に、カイトが力強く頷いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

KAITOful☆days #03【KAITOの種】

ようやくここまで辿りついた……! 飛び道具付きだったんです。そこが書けたのでひとまず満足w
KAITOズは初日から喧嘩勃発してますが、少しずつ仲良くなる……はずです。きっと、多分。
ストック分がここで尽きたので、少しペース落ちますー。
次はどうしようかな。とりあえず種KAITOの名前を決めたい。

今回も『裏』があります。前回同様、同じ話の兄さん視点です。「前のバージョン」からどうぞー。

KAITOの種 本家様。
http://piapro.jp/content/aa6z5yee9omge6m2

 * * * * *
2010/07/17 UP
2010/08/30 編集(冒頭から注意文を削除)

閲覧数:430

投稿日:2010/08/30 21:35:09

文字数:2,560文字

カテゴリ:小説

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  • 秋徒

    秋徒

    ご意見・ご感想

     アイス食べているうちに寝てました;;どうも、秋徒です。
     カイトのヤンデレ台詞に萌えた(*´∀`) 独占欲って素敵です。マスターは兄さんのものじゃないですがねw
     マスターと兄さんの交互視点でも大丈夫だと思いますよ。同じシーンで意識のすれ違いとか書いてくれるとなお美味しいです(黙
     そろそろ種KAITOの名前が決まる頃でしょうか?元のアイスだけに大変そうですが…;;
     私もピアプロでヤンデレのマスカイ書いてるんで、良かったらアドバイスください。病んでるのはマスターですがw それでは、次回も楽しみにしてます!

    2010/07/18 16:35:18

    • 藍流

      藍流

      秋徒さん、いつもコメントありがとうございます!

      長い間ROM専で書き手に回るのは数年振り、毎回びくびくしながらUPしている身なので、
      萌えたと言っていただけて嬉しいです! 『裏』についても、自己満足の部分があるので…
      (ネタ出しの時点で両方の視点ごっちゃに考えるので、どちらかの視点だけだと書ききれないのです。
      そして書ききれない分を捨てられない貧乏性なのでs)
      「あの時は実はこういう考えだったのか!」と『二度美味しい』話にできるのが理想なんですが;
      種っ子の名前は本当に…マスターの「しまった」は私の本音です。いっそ募集したいw

      マスターの方が病んでるとは、なかなか珍しいパターンの小説を書いておいでなんですね!
      近いうちに是非お邪魔致します。
      読みたいし書きたいし時間が足りない…!

      2010/07/19 01:19:34

  • 霜降り五葉

    霜降り五葉

    ご意見・ご感想

    初めまして、霜降り五葉と申します。
    カフェモカと氷に種を植えたものです(最近更新出来てませんが;)

    KAITOズの掛け合いが楽しいですね~。マスターさんも素敵です。
    ホッピングシャワーの能力に驚きましたw
    体格差のある兄さんにはこれで立ち向かうのですね!
    名前も気になりますし…。マスターさん、早くいい名前をつけてあげて下さいね。

    ではでは。影ながら応援させていただきますねー。

    2010/07/18 13:52:47

    • 藍流

      藍流

      初めまして。コメントありがとうございます。
      種っ子小説の先達に来ていただけるとは光栄です…!

      KAITOズの掛け合いは加減に四苦八苦しているところなので、楽しんでいただけたとのことで
      ほっとしました。うっかりすると種っ子の可愛さが損なわれそうで難しいです…。
      特殊能力w に驚いていただけて嬉しいです! n番煎じなので変わったことをしてみました。
      むしろあの攻撃を書きたいがために喧嘩してもらったようなものですね。ちなみにアレは
      食べても無害(普通にパチパチキャンディ)というどうでもいい裏設定がありますw
      名前は私が決めかねて引っ張っております; 次回には何とかしたいところですね。

      ストックが尽きたので少し間が空きますが、また見ていただけると嬉しいです。

      2010/07/19 01:03:10

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